第8章 激闘への序曲

 予選第四組。筋骨隆々たる豪傑や、いかにも奇怪な能力を持っていそうな風体の女、並み居る猛者たちの中で一際浮いて見えるのがリュカとルディーだった。二人の子供は周りの大人たちに煙たそうな目で見られても素知らぬ顔。いくらか背の伸びた今では、リュカの背中の剣もそれらしく見えるが、それでもやはり石のステージへと向かう二人があまりに場違いなのははっきりとしていた。
 「頑張って___」
 ソアラは自分の胸に手を当てて、もう一方の手は百鬼と結び、時折力を込めた。
 「らしくねえな、俺たちは堂々としてねえと。」
 「そりゃそうなんだけど___」
 百鬼の笑みを見ると彼女もいくらか落ち着いた顔になる。二人を励まそうと、ライも寄ってきた。
 「しっかり応援してあげればいいのさ。気分がすっきりするよ!二人とも頑張れ〜!」
 そう言って陽気に手を振ってみせるライ。子供たちも彼の声に気づき、振り向いて手を振り返していた。しかしソアラと百鬼の目が釘付けになったのは、むしろライ自身の手だった。
 「ちょっとライ!」
 「はい?」
 「おまえその手!」
 「え?」
 「光ってるじゃない!」
 「?」
 ライは徐に手を見る。すると確かに、刻まれた数字が光っていた。
 「本当だ!」
 「早く行け!失格になるぞ!」
 百鬼に尻を蹴飛ばされて、ライは石のステージに走り出した。
 「ライ!二人を頼むわね!」
 「任せて!」
 手の光に気づいていなかったのは本当だ。でもライは元々この戦いに参加したくてうずうずしていた。リュカとルディーの戦う姿、子供たちの死闘を見るのが辛いのはソアラと百鬼だけではない。彼もまた、子供たちを守りたくて仕方のない気持ちだった。
 (これは僕に与えられたチャンスだ!今度こそ守ってみせる!)
 ライは走る。その胸に悲壮な決意を宿して。




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