第28章 鳥かごの中で
「どう思う?」
巨大な鳥の巣ことバルカンの神殿。レイノラは連れ立ってきたフュミレイに問うた。側にはキュルイラも立っている。外では同胞を闇に葬られた鳥たちがけたたましく喚いているだろうが、ここはその声すら届かない神殿の深部だ。
三人の前には卵の殻があった。
「生まれて日は経っていませんが、バルカンが倒れるよりも前のことです。そして早々に飛び立っています。」
卵の殻はいくつもあった。滅茶苦茶に割れていたが、それぞれに鮮やかな色が付いていたから数えることができた。そして殻の周りにはいくつかの羽も散っていた。色は全部で七種類。赤、青、黄、緑、茶、白、黒。
「力は?」
「感じます。この殻から生まれただろう七匹の鳥は、強い力を持っています。しかしバルカンには遠く及ばない。」
「同感ね。」
レイノラはフュミレイの意見に同調した。そんなやり取りを端から見ていたキュルイラは、クスリと笑った。
「どうかしました?」
レイノラが訝しげに問う。
「ううん、何でもない。愛してるし愛されてるなぁって、そう思っただけ。」
酒の女神は悪戯っぽく笑う。レイノラは小さな溜息をついて、再び殻に向き直った。
「これはどうかしら?」
「色がくすんでいますね。青い殻と白い殻です。」
「他の殻と違うと思うけど。」
「そうですね。まるで死んでいるかのようです。」
「そうね。」
鮮やかな赤色の殻と、くすんだ青色の殻。指で摘めばその脆さにも雲泥の差があった。
「バルカンはどういう方法で復活するのかしら?」
「性骨と同じなら、女の腹からです。」
「___」
「しかし、死んでから孕ますことはできません。孕ませた上で死ななければ成立しない。慢心によりそれを怠ったから、性骨は敗れました。」
「なら___私たちは卵を探さなければならない、ということね。それはこの七つの殻ではなく。」
「そう思います。そして卵は、最も安全な巣で抱きます。」
「ここは安全な巣ではない。」
フュミレイは頷く。そして二人はキュルイラを振り返った。
「やっと出番?」
キュルイラはいつもどおりの艶っぽい笑みで答えた。
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