第23章 絶望
光の神と闇の神はともに高位な神であった。地も、海も、風も、火も、全ては光と闇の営みにより育まれるものである。光の神ルグシュ、闇の神ウルティバンは老いてなお偉大であった。それが外様の後継者であるジェイローグ、民兵とのあいの子であるレイノラの世代となった途端、Gが現れ、バルディスが滅びた。
ジェイローグとレイノラもまた偉大であるにもかかわらず、バルディスの歴史においては汚名を残している。それがGにより刻まれたものであり、二人が今もなおその巨大なる力に振り回されていることを思うと、例え神であっても不条理な因縁を感ぜずにはいられないだろう。
「変身したけど___そんなに変わってないようね。」
フェリルの右目がぼんやりとした青白い光を纏う。オルローヌから奪った能力で、彼女はレイノラが内に秘める強さまで見通していた。
「かつてウルティバンは最強の神と呼ばれた頃もあったという。遠い昔の話だが、その娘を侮るべきではない。」
それでもバルカンは慎重だった。そしてフェリルもその慎重さに同調している。だからこそ、一対二の状況を作り出したのだ。
「___バルカン。」
レイノラが呟く。
「な___」
なんだ?と応じようとしたバルカン。しかし次の瞬間にはその嘴をレイノラの左手が捕まえていた。
「!?」
フェリルは二人を結ぶ空間に超振動の刃を張り巡らせていた。だが気付いたときには、朝日眩しい空に、黒く縁取られた半円状のものがいくつも散らばっていた。縁取りは蝕むように超振動の刃を食い進んでいた。
「宵闇の裁き。」
バルカンが何もできないうちに、レイノラは至極冷静に言った。嘴を掴む手が暗黒に燃え上がる。凄絶な黒い波動はすぐに、白い空に漆黒の直線を描き出していた。
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