第2章 伝説の行く末

 冥府の脅威から逃れたドラゴンズヘブン、そして天界だが、その爪痕は色濃く残っていた。勝利は得たが、多くの島、多くの命、生き残った人々の安寧、全て失われた。今、ドラゴンズヘブンの人々は我を忘れて歓喜している。これが日常に戻ったとき、失ったものの大きさを思い知るのだろう。
 「ジェイローグ___」
 レイノラはいまだ空で、物言わぬジェイローグを抱きしめていた。背を震わせて噎び泣く彼女の姿は、光の神と闇の女神を迎えに出たソアラの笑顔をも消し去った。
 一頻り泣き終え、彼女が振り返るまで、ソアラはそこでじっと待っていた。
 「___いたの。」
 振り返ったとき、髪に隠れてない左目の周りを真っ赤にして、それでも落ち着きを装ってレイノラは言った。
 「ごめんなさい、ソアラ。恨むのなら私を恨んで。」
 「恨むだなんてそんな___」
 ソアラは困惑した。悪い予感はしていたが、レイノラの涙と言葉の意味とが結びつかなかった。
 「何があったんですか?教えてください。」
 「私が愚かなばかりに、私たちは最も偉大な神を失ったのよ。」
 そう言って、レイノラは己の掌を開いた。そこには鼠の死骸のようなものが寝転がっていた。
 「これは___そんな、まさか!?」
 さしものソアラも取り乱した。狼狽し、息の詰まる思いだった。その鼠の死骸のようなものがあの勇ましかった竜神帝だというのか。
 「行きましょうソアラ。我らの愛しい人を光溢れる場所で休ませるために。そして___あなたには話さなければならないことがある。」
 「話___?」
 「かつて世界を破滅させた悪魔のこと。もう、あなたとアヌビスは、その一端に触れているわ。」
 虚ろだったレイノラの眼差しに力強さが舞い戻りはじめた。それはジェイローグに対する決意か。ともかく、彼女はもう泣いてはいない。新たなる戦いの指揮者となるべく、立ち上がる力強さを取り戻そうとしていた。
 さて、話は再び遙か古の時へと遡る。Gとジェイローグの戦いのその後に___




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