2 黒麒麟の館

 「何で砂座も風間もいなくなっちゃったの!?」
 鵺は酷い剣幕で父である鴉烙の前に立ちはだかっていた。車椅子の鴉烙は鵺を見ず、憮然としていた。
 「父様!答えて!」
 整然と片づけられた鴉烙のデスクに乗りかからんばかりの勢いで、鵺は迫った。
 「よしなさい、年頃の娘のすることではない。」
 鴉烙は落ち着き払っていた。いつもは見ている方が恥ずかしくなる溺愛ぶりで鵺を可愛がる彼だが、今日の鵺の形相ではそれも無駄だと感じたのだろう。
 「何でいつもそうなの!?あたしの好きになった人を___何でいっつも消しちゃうのよ!」
 半狂乱に近い。鵺は苛々に任せて鴉烙のデスクを叩いた。
 「久遠も泰童も___みんな父様が消しちゃったじゃない___!」
 「およしなさい、お嬢様。」
 不動の鴉烙に変わり、甲賀が鵺の肩に手を触れて制止する。しかし振り向いた鵺は怒りに任せて彼の頬を平手で張った。
 「わかりもしないことに口を挟まないで!」
 目にうっすらと涙を浮かべて一喝する鵺。だが甲賀は頬に赤い跡を残しながら至極冷静でいた。そして___
 パンッ!
 「!」
 鵺はその瞬間を疑った。鴉烙の目の前で、甲賀が彼女の頬を叩いた。女の頬を___いや、主人の娘の頬を叩いた。驚いた鵺は、甲賀に横顔を向けたままで硬直した。
 「お嬢様、己の立場を尊重してください。」
 鴉烙は甲賀を戒めることはしない。ただ黙って彼に任していた。
 「風間は今でも鴉烙様のお命を狙っています。砂座は奴の旧友であり、奴の過去について話を聞き、協力を承諾していました。あの二人は皇蚕の秩序を乱します、鴉烙様にも、お嬢様にも危険を及ぼす存在なのです。」
 甲賀の言葉を聞くうちに、鵺から熱が引いてくる。口惜しさをかみ殺すようにして、彼女はきつく甲賀を睨み付けた。
 「嫌いよ!あんたなんか!」
 もう一度頬を張る。
 「父様も嫌い!」
 鴉烙を振り返って捨て台詞を一つ。そして鵺は駆けだしていった。
 「申し訳ございません。お嬢様に手を挙げたこと、処罰はお受けいたします。」
 甲賀はすぐさま鴉烙に頭を下げた。
 「いや。」
 鴉烙が葉巻に火をつける。
 「鵺の気性を諫めるにはあれくらいが必要だ。」
 鴉烙は鵺のことを語る時、実に冷めて見える。甲賀は以前からそう感じていた。
 「あの扉だ、あれが鵺をああさせる。あの娘には我が一族の能力継承など頭にない。」
 「___」
 「だが、あの扉があるからこそ、鵺は私の側に居続けなければならない。」
 彼の言葉には愛情の片鱗も見えない。鵺の愛らしい容姿を褒める言葉も聞かない。
 「甲賀、娘はここを出かねない。それだけは許すな。」
 「はい。」
 普段の鴉烙がこうだから、鵺は溺愛されているようでも彼の愛情に偽りを感じているのかもしれない。だから彼女は風間や砂座にまで愛着を持つのかも知れない。
 「___」
 甲賀は暫く鵺を監視することにした。彼女のことを考えながら。

 「大物はいないな。なかなか飛び抜けた戦力には出会えない。そして___その先の手がかりもつかめずじまいか。」
 丸刈りで浅黒い肌をした少年、牙丸が岩に腰掛けて首を捻っていた。片手には手帳、もう片方の手で頭のてっぺん辺りをかいている。
 「あ、いけね、耳は顔の横だったな。」
 今度は耳をほじる。
 「おい兄ちゃん。」
 彼が座る岩の前には、若い男が仰向けで転がっていた。爪に麻痺針をもつ盗賊の妖魔だったが、牙丸を狙ったのが運の尽き。気づいた時には自分の手に針を突き刺して痺れていた。
 「この辺りは詳しいだろ?」
 微かに震えながら硬直する男は痙攣するようにして頷いた。
 「この辺りで一目置かれている妖魔は?」
 唇が固い動きをする。しかし声にはならない。すると牙丸は岩から降りて彼の額に手を当てた。
 「念じろ。」
 そう言って牙丸が目を閉じる。
 「くろきりん?」
 男の顎が立て続けに三度動いた。
 「黒麒麟か。どこにいる?」
 牙丸が再び目を閉じる。
 「なるほど、ありがとう参考になったよ。」
 牙丸は男の額を一叩きし、立ち上がった。必死に身体をばたつかせている彼をそのままに、牙丸は近隣にあるという黒麒麟の館を目指した。

 夜明けと共に黄泉は明るさを増す。それでもどんよりとした灰色の空に何ら変わりはない。森の中に佇む煉瓦造りの館の二階。黒麒麟は窓辺の椅子に腰を下ろし、小間使いが持ってきた飲み物を口にしていた。素肌の上に黒いローブを纏った姿で。
 「ん?」
 露わな左の顔を外に向けるようにしている。その黒麒麟の目に、意気揚々とこちらに向かってくる少年の姿が止まった。
 「___」
 何者か?訝しげに見ていた黒麒麟だったが驚いたことにその木訥そうな少年は、窓の方を見上げて立ち止まったのだ。
 (奇妙な___)
 見た目とは異なる特別なゆとりを感じる。少年が笑顔でこちらに手を振る様を見て、黒麒麟は口元を歪めた。
 「おもしろい。」
 少年が再び歩き始めると、黒麒麟も立ち上がる。
 「客人が来た、支度をせよ。」
 彼女は部屋の壁に据え付けられた水晶に手を触れ、呟いた。それだけで下の階では小間使いが慌ただしく動き出した。
 ___
 「ふん___」
 館に招き入れられた牙丸は、客間で黒麒麟を待つ間、部屋に飾られていた美術品に目を向ける。
 「お。」
 特に絵。腰掛けたソファの後ろに見えた絵画に惹かれ、牙丸はそちらへと歩み寄った。
 「___」
 その絵は美しき青空が描かれていた。それを見つめ、牙丸はフッと失笑する。
 (驚いた、どうやらこれは___)
 「絵画に興味がおありか?」
 しとやかな声を聞き、絵を見てにやついていた牙丸は肩を竦めた。
 「この絵には気を惹かれました。」
 「私が描いたものだ。」
 黒麒麟の装いを目の当たりにし、牙丸は思わず目もとに手を当てた。
 「___私を男とは思っていないので?」
 黒いローブは薄手で、体の線がくっきりと映し出される。隙のある胸元を見れば彼女がそれ一枚であることはよく分かった。
 「ただ者でないとは思っていた。だが一目見て思えば___おまえは獣だ。私の女が無防備すぎたと少々戦いている。」
 そう言って黒麒麟はローブの裾を内に寄せ、なるだけ肌を隠すようにした。
 「座りたまえ。」
 そうして牙丸と黒麒麟は向かい合うようにして座った。
 「思いがけない出会いとはあるものですね。」
 腰掛けるなり語り出したのは牙丸だった。
 「私は優れた力を持つ妖魔を探して旅をしています、名は牙丸。あなたの噂を耳にして尋ねました。しかしあなたは私の想像を絶するお方でした。全く、畏れ多い。」
 その牙丸の物言いと彼の仕草は不釣り合いだ。彼はこの出会いに恐縮するどころか、高ぶった心を抑えきれないほど浮かれている。
 「続けて。」
 黒麒麟は微笑を浮かべ、彼に言葉を続けさせる。お互いにお互いのことを気づいたと悟った牙丸は、ニヤリと笑った。
 「闇はお好きですか?」
 「ああ。」
 黒麒麟は微笑んで答える。
 「空は青いですか?」
 「そうだな。」
 黒麒麟は頷く。
 「竜は___」
 二人の視線が交錯する。竜と口にした時の牙丸の視線、それは心の奥底に土足で踏み込むような無礼さがあった。
 「好きですか?」
 「フフ___」
 黒麒麟が笑う。牙丸はその反応を楽しんでいた。
 「嫌いだ。」
 牙丸はその答えの理由を問おうとはしない。黒麒麟が「ある人物」だとの想像を確信に変えるには、嫌いという答えで十分だった。そして黒麒麟もまた、牙丸の問いかけを聞くごとに、彼が何者かを確信していった。
 「あなたが尊敬するものは?」
 「信頼。」
 「卑下するものは。」
 「裏切り。」
 「不思議ですね、我々は初めて会うというのにやけにお互いのことが分かり合えるようだ。」
 「そうね。」
 分かり合えるとの言葉に不快な表情を見せたものの、黒麒麟も否定はしない。
 「肝心なことをまだ聞いていない。ここに何をしに来た?私の好みを聞きに来たわけではないだろう。」
 「そうでした。」
 牙丸はポンと手を叩く。
 「餓門をご存じで?」
 「名前くらいは。会ったことはない。」
 「水虎の死に伴う黄泉の動乱は?」
 「それは知っている。」
 「戦乱を有利にし、餓門を覇王に導く戦士が欲しい。私はいわゆる目利きですね。」
 それを聞いた黒麒麟はソファに身を擡げ、己の爪に目を向ける。丁寧に手入れされた爪が牙丸の気を惹く。だが彼女の態度は彼の本題に興味がないことの現れだ。
 「どうです?餓門の元でその力を示す気はありませんか?」
 「興味はない。黄泉の戦乱に首を突っ込むつもりは全くない。」
 黒麒麟の回答は明確だった。
 「そうですか。」
 「窮屈そうだな、敬語は。」
 牙丸は苦笑する。彼は黒麒麟の勧誘に執着する様子はなかった。
 「帰ります。これ以上居るとここを離れたくなくなりそうだ。」
 「そうだな、私もおまえを行かせたくなくなるかも知れない。」
 「それは___私たちの目指すところが同じだからですか?」
 その問いに黒麒麟は答えなかった。立ち上がった牙丸を見る冷笑は、彼の背筋に緊張を与える何かを秘めていた。それは彼女の秘めた力の成せる業である。
 「失礼しました。」
 牙丸は黒麒麟に深く一礼し、踵を返した。
 「次に誘いに来る時は、本性で来い。そうすれば私も考える。」
 部屋を出ようとした彼の背中に、黒麒麟は声をかけた。牙丸が振り向くと、彼女は窓から外の様子を見ていた。
 「お邪魔しました。」
 牙丸は笑顔で部屋を出た。この出会いは彼にとっての思いがけない収穫。館を出てからもしばらくはこみ上げる微笑みが消えなかった。
 「良い出会いだ、これは___」
 餓門のための目的は果たせなかった。しかし彼はきっと再び彼女と会うだろうと考えていた。その時を思うと今から胸が高鳴っていた。

 「ハァハァ___」
 純白の空間に立ち、ソアラは肩で息をしていた。
 「うぅっ!」
 足が空間に沈み込んでいく。溜まらず魔力を解放して脱しようとするが、身体が異常に重い。それでも何とか引力から逃れ、ソアラは宙に舞った。
 「なんなのよ___」
 この現象は突然起こった。時間の感覚が失われつつあるので何とも言えないが、おそらく四時間も前からだ。
 「ギッ!?」
 今度は髪が白に食われている。本当に食われているという言い方が正しそうだ。必死に首を捻って、できるだけ少なく済むように呪文で髪を切り落とした。
 「このぉ!」
 自由を取り戻すとすぐさま髪を喰らっていた白に向かって拳を振るう。しかし空を切った。そこには何もない、ただ空気があるだけ。
 (どうも妙ね___)
 なんというか、気配はあるのだ。何かがいる感じはある。そもそもこの空間にちょっとした疑問を感じているところ。前に進んでも進んだ感じがしない、まるで異次元のような場所。
 「っ___」
 そしてこのうだるような暑さ。このところ特に酷い。たまらず服の袖を破ったほどだ。ただそれにしては喉が渇かないのも妙。ここには水がないが苦にならない。そういえば食事もとっていないが空腹感はなかった。
 「!?」
 その左腕に滲む汗を拭い、ソアラは目を疑った。肌に汗とは違うべた付きがあったのだ。皮膚が酷く赤い。
 (溶けてる___!?)
 としか思えない。追って鈍い痛みを感じたが、この腕の焼けただれかたを見る限り、そんな痛みですみそうにない。
 (感覚が鈍ってるのか?)
 ソアラは頬を抓ってみる。いつもに比べて痛みがない。
 「あ___」
 腕のべた付きを拭った手が赤くなってきた。今頃気づいたことが信じられないが、全身の中で左腕の汗が最も酷い。
 「ここは___なにかがまずい!」
 出るか?普通ならそう考えるところだが、ソアラは違った。この中に入って何夜が経ったのかさっぱり分からず、四夜を過ぎたかどうかの自信もない。少なくともあの蝿男よりは長く入っていること、それが餓門への評価になる。そう考えていたから、この時点でソアラに「出る」という選択肢はなかった。
 ゴォッ!!
 宙に舞ったはずなのに再び足が白に食われ始めた。その時ソアラが黄金に変わる。
 (吐いた___!)
 彼女の身体に迸る力、溢れ出るエネルギーに驚いたか、足に食らいついていた白が離れた。ソアラはすぐさまそちらに向かって腕を振るう。鋭利な風が走るが、手応えなく拡散して消えた。
 (何かいるのは間違いない。でも気配だってはっきりとは感じられないし___ただ何か肌を焼くような液体がどこかから出ているのは間違いない。それはきっとあたしを『食べよう』としている奴がいるからなんだ。)
 黄金になることで近頃のソアラは一層冷静沈着になれるようになっていた。自らが放つ黄金の輝きで、純白が眩しさを増す。目を閉じると瞼で無数の星が瞬くようだった。
 「そうか、白なところが問題なんだ。白は光を反射させる。それが錯覚の源!」
 ソアラは降下する。今宙にいたことを忘れさせるような状況だったが、少し下がれば床に当たった。純白にしゃがみ込んで手を触れる。
 (なぜここはこんなに明るいのか。ここが試練の間、薄暗い黄泉にある城の一つの部屋であることには変わりない。まともじゃないから明るい。そしてあたしがこんなに自分の光をまぶしく感じたのは___)
 ソアラの魔力がぐんぐん高ぶっていく。黄金に変わった頭髪が激しく逆立つほどに。
 「この白は無限じゃない。強いて言えば夢幻だ。全ては計算された反射!ヘイルストリーム!」
 ギガガガガガガ!!
 見えない床に当てられたソアラの手を中心に、円を描いて氷が走る。凄まじい勢いで、透き通るような氷が白を覆い隠していく。
 「はあああ!」
 ソアラは加減なく魔力を送り続けた。氷は凄まじいスピードで床に広がっていく。驚いたことにそれは平面ではない。白は曲面を描いて広がっていった。
 やがて___
 「ふぅ___」
 ソアラは氷の球の中にいた。
 決して広くない。球体の底にソアラは立っていた。氷で壁が本来持つべき美しき面を消すと錯覚の仕組みが分かった。
 「曲面の鏡なんて見たことがない___凄いところだ、ここは___」
 氷の向こう、良く覗き込むとソアラの顔が歪んで映っていた。
 「そして光は___」
 綿毛のようなものがいくつも舞っている。それはささやかな白い光を放っていた。この光が無限の鏡で無限の反射をし、無限の純白を作りだしていた。そしてそれをもう一つ演出するのが___
 「引力だ。」
 傾斜に足を向けても身体に負担がない。足の向いている方向が下になる。
 (おもしろいところね、でも___あたしを食う何かが潜んでいる。だから黙っているわけにもいかない。)
 ソアラは黄金の輝きを消さず、彼女の足下から溶け始めた氷の上に立ち、目前の球面に両手を向けた。
 「久しぶりだから___少し加減しないとね!」
 輝きが両手に結集する。竜の使いソアラが織りなす攻撃で、最も一撃の破壊力が高いであろう秘技。繰り出すのはアヌビスとの戦い以来だった。
 「竜波動!」
 ゴッ!
 氷が一気に昇華し、閃光は鏡の中で無限大の輝きを見せる。だが一瞬で、光に逃げ場が生まれた。ソアラの波動で鏡の一部が砕け、吹き飛ばされた。無限の球体にほころびが生じ、開いた大穴から光が一直線に外へと伸びる。
 シュゥゥゥッ!
 「!?」
 驚いたソアラが背後を振り返る。衝撃で鏡全体に濁りが走り、純白が損なわれていた。その景色の中で、白い煙が立ち上っていた。
 「スライム___か?」
 煙の出所が山形になっているように見えた。よく見れば溶けずに残った氷がそこだけ奇妙な形をしている。
 「よし。」
 確認したくなったソアラは輝きを解き、目に見えない何かに直接手を伸ばしてみた。するとそこには弾力性のある何かがあった。
 「濡れてる___つっ!」
 掌全体にお湯をかけられたような痛みが走り、ソアラは手を引いた。掌が焼けたように赤くなっていた。だがおかげでこの球体に自分と一緒に何がいたかは分かった。
 「酸液のスライム。しかも光が無くなると溶けるみたいね。」
 ソアラはスライムをそのままに、玉の穴から顔を出した。どうやらこの玉は空中にあるようで、少し離れたところに床が見える。ソアラは床に飛び降りるつもりで穴から出た。
 「え!?」
 しかし飛び出した途端、天地が逆転し、さしものソアラも背中から床に倒れた。
 「いった〜。」
 どうやら先ほど見えた床は天井らしい。球体の引力で錯覚したようだ。
 (あ〜、なんだかちょっと変かも。)
 目の調子がおかしい。ずっとあの強烈な光の中にいたからだろう。目が慣れるまでは薄暗い場所で苦労しそうだ。
 「ここは___」
 暫く目を閉じて暗さに慣れさせ、ソアラは改めて周りを見渡す。
 「どこ?」
 暗さ、湿気、空気の冷たさを踏まえると、金城の地下か。よく見ると鏡の球体は大きな柱に挟まれるような形になっていた。この柱は試練の間へと続く扉があった柱だろう。
 「迷宮ってとこかしら。」
 精巧な平面が印象的な一枚岩の壁が続く廊下。鏡の玉の右手にも左手にも伸びるが、奥は見えない。
 (玉を壊したからには、どこか出口を見つけて戻らないといけないな。)
 仕組みは分からないが、試しに玉の中に戻って「出る」と念じてみても反応が無くなっていた。やむなくソアラはその手に炎を灯し、闇を照らす。右も左も、廊下の先は二手に分かれていた。
 「よし。」
 まずは右から行ってみよう。勘を頼りにソアラは歩き出した。このとき、彼女が試練の間に入ってから三夜が過ぎていた。それは榊が期限の目安としていた時間である。




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