第22章 シュバルツァー狂乱
「___」
竜樹は白いバスタブの中で、傷のある左腕を出して湯に浸かっていた。百鬼が焚いてくれた風呂で身体の汚れを流し、もう冷めてきた湯の中でじっと神妙な面持ちを呈していた。
「___女。」
自分の身体を眺め、彼女はポツリと呟いた。
「どうしたって、俺は女なんだよな___」
竜樹はそのまま口元まで湯中に沈み、しばらくすると飛沫を弾かせて伸び上がった。
「よ〜し!」
そして力任せに頬を一叩き!
「ん?」
鍛冶屋近くの民家の一室。風呂場から聞こえた音に百鬼は小首を傾げた。すると___
「百鬼!」
ペタペタと水気ある足音をたて、竜樹が部屋へと駆け込んできた。
「どうした!?なにかあったのか!?」
竜樹は珍しく体にタオルを当てていたが、妙に慌てているように見えたので、百鬼も刀身半ばの龍風を握った。しかし警戒は杞憂に終わる。
「俺の話を聞いてくれ!」
「はぁ?」
「今決めたんだ!俺___おまえにだったら何もかも話せる気がする___!」
「なんだって?」
決意が揺らぐ前に口に出してしまいたかった。身体から昇る湯気は気迫の現れのようである。
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