第2章 ドラゴンズヘブン
子供たちにどう話すべきか___百鬼は錯乱していた。何も話さないわけにはいかない。しかしもう幼稚なごまかしが通用するかどうかも分からない。ただそれでも手紙を見せる気にはなれなかった。婉曲させて話さなければならない。アヌビスが生きているかも知れないという言葉も二人に伝えてはいけない。
だが___
「やっぱり___あたしは何となくだけど分かってた。」
ルディーは寂しそうな顔一つしなかった。彼女の強気が成せる気勢に過ぎないだろうが、そればかりかソアラの旅立ちを感じていたと口にし、百鬼を驚かせた。
「お母さんは冒険が大好きなんだよ。」
リュカもそう話すが、彼は落胆の色を隠せるほどの役者でもない。いまにも泣き出しそうな目をしながら、ルディーの怒ったように歯を食いしばる顔を見て必死に堪えていた。 「おまえら___素直すぎるぞ。」
辛辣だったのは百鬼だ。子供たちの無理があまりにも如実だったので、心が締め付けられた。そして手紙一つで出ていったソアラに憤りが沸いてきた。
「僕はお父さんがいれば大丈夫だよ!」
「それに、お母さんはちゃんとあたしたちの側にいるもの。」
ルディーはソアラが残していった髪の束を手に取り、その小さな手でギュッと握る。
「ごめんな___リュカ、ルディー___父さんがもっとしっかりしてれば母さんだって黙って出ていったりしなかった___」
百鬼は二人を抱き寄せる。彼の腰の辺りに顔を埋める二人。リュカは堪えきれずに泣き出し、ルディーは口をへの字にして必死に涙を堪えていた。
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