第15章 復活の道しるべ

 大勢の一つ目猿に襲われて、足を踏み外して急斜面を転げ落ち、岩に頭をぶつけて意識朦朧としている中、大きな犬のような獣が助けてくれた。犬は私をどこかに運んで、気がつくと真っ白い湯の温泉にいて、体中の傷、黒麒麟の闇までがほとんど失せていた。と、そこへ私を助けたであろう北斗という名の狼と、その背に乗った白髪玉のような老人が現れた。
 と、ここまで目まぐるしく色々なことが起こりすぎて、頭をぶつけたせいもあるのかも知れないが、ソアラは老人の登場にしばし呆然としていた。
 「おい、何か言わんか。人が名乗っとるのに。」
 格好つけて登場して名乗りを上げた白湯仙は、ソアラがぼけっとしているので白髪の眉をつり上げた。目も口も毛に隠れて見えないが、眉や髭が面白いように動いて感情表現をする姿は滑稽だった。
 「あ___すみません、まだちょっと頭がボーっとしてたみたいで。」
 軽い立ちくらみでもしたか、温泉の縁に片手を付いてソアラはそう答えた。
 「そりゃお主、のぼせとるのじゃ。」
 確かに、この温泉はかなり熱い。
 「まあ頭が冴えるまでボーっとしとるのも良かろうて。わしゃおまえを眺めとるだけでもなかなか気分がええ。」
 「ん?」
 服のまま温泉に浸かっていたせいで、決して厚着とは言えなかった彼女の服はベッタリと体に張り付き、滑らかな曲線を露骨にしていた。前屈みになっていたため、胸の陰影は一層はっきりし、白湯仙の白髪はだらしなく弛んでいた。
 「きゃ〜!」
 本気とは思えないお茶らけた悲鳴でソアラは白湯仙のフカフカした頭を叩き、彼は転倒した。
 「な、なにをするか!?」
 「あっ!」
 ついスケベの代表格、アモンの頭を叩くような気分になってしまった。ソアラはすぐに平謝り。そのころにはようやく頭も冴えてきた。




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