第14章 雌伏の勇士たち
闇の女神レイノラ。
竜神帝をジェイローグと呼び、ソアラの本当の名前であるシェリル・ヴァン・ラウティを知っていた黒麒麟が去り際に言った言葉がそれだった。
「くっ___」
体を動かすとまだ軋むように痛んだ。絨毯にはまるで大量のインクを零したような黒い染みが広がり、その色合いはソアラの両足にも染みついていた。
「いたたた___」
歩き出そうとしても、黒く染まった膝や足首が思うように曲がらない。
「踏ん張るのよ___ここでやれなくてどうする!」
レイノラと名乗った黒麒麟が「ジェイローグの光で消してみろ」と言っていたから、この染みをうち消す方法は分かっていた。
「うううぅぅぅっ!」
紫色の髪がざわめく。そう、竜の使いの力で光り輝き、内側から黒を追い出してしまえばいいのだ。
ビギビギッ!
「うああっ!?」
しかしそれを拒絶するように黒い彩りが体を締め付け、ソアラは顎を突き上げて喘いだ。脚が酷く痺れ、痙攣すると尻餅を付かずにはいられなかった。
「くそ___」
まだ闇の方が強い。体を蝕む闇は静かに見えるが、たまたま上半身が何らかの力___おそらく花に込められた母の力で闇から解き放たれ、意識を取り戻し、脚を棒だと思って立ち上がることはできた。しかし闇が消え失せたわけではなく、ソアラの体を冷酷に食い進んでいるに違いなかった。
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