第6章 新たなる一歩

 その日、ソアラは一つの決意を胸に部屋を出ようとしていた。アヌビスから貰った八柱神仕様の皮の服を身に纏い、クローとナイフはベルトに引っかけ、包帯をポケットに詰める。胸元にはフュミレイが残した形見のネックレス。
 「よし___」
 用意は調った。足りないものがあるとすればドラゴンズバイブルだが___一度アヌビスの手に渡ってしまったものを取り返すのはあまりにも難しい。彼が自分の想像通り、時のない世界を謳歌できるとすればなおさらだ。
 万全の装備を調えたソアラは部屋を出た。目はいつになく慎重で、吐息は静かになっていた。
 「いくぞ___」
 「なにしてんの?」
 「は!?」
 ソアラはびっくりして振り返った。颯爽と廊下に飛び出した途端、背後から聞き慣れた声が飛んだからだ。
 「エ、エスペランザ!」
 振り返るとそこには小首を傾げてソアラを見ているエスペランザがいた。よりによって彼に見つかるとは、全く早々からついていない。
 「なにやってんのさ、武器なんか持って。」
 「お願い!見逃して___!」
 ソアラはいきなりエスペランザの前にひれ伏し、彼に縋るように訴えた。
 「はぁ?どうしたのさ。」
 エスペランザは訳が分からずに困惑している。
 「___脱走したいの!」
 「脱走!?」
 エスペランザは飛び上がらんばかりに驚いた。



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