第5章 竜の使い

 青い壁が蠢く奇妙な部屋、その中央に棺桶のようなものがある。部屋へとやってきたダ・ギュールが棺桶の蓋を開けると、そこは真っ赤なゼリー状のものが満たされ、うっすらとだがソアラの影が浮かんでいた。
 「もう良いだろう、肘を張って身を起こすがいい。」
 低くて良く響くダ・ギュールの声がする。暫くすると、ゼリーが大きく盛り上がり、内側から突き破ってソアラが飛び出してきた。
 「ぷはっ。」
 息苦しかったわけでもないのだが、ソアラはゼリーから頭が出た途端大きく息を付いた。
 「へぇ〜、凄いなぁ。両腕がすっかり治ってるじゃない。」
 左腕の炭化、右腕の傷はすっかり回復していた。このゼリーに入れと言われたときは恐る恐るだったが、これほどの治癒効果があるとは驚きである。自分が裸であることも忘れて、ソアラはまだ下半身をゼリーに沈めたまま腕をブンブン振り回していた。
 「早く服を着ろ。」
 「あっ___って冷静ね、あんた。」
 ソアラから目を逸らすわけでもなく、にやつくわけでもないダ・ギュールはあまりに沈着。ソアラは慌てて胸を隠し、苦笑いでダ・ギュールを見やった。
 「服を着たならばアヌビス様の元へと行くぞ。」
 「あたしの驚くようなプレゼントだっけ、何だろ。あ〜、新しいシャツないの?」
 ソアラはこの時はさほど期待していなかった。むしろ自分がどうやってベティスを倒したのか、それについて詳しく聞きたかったし、アヌビスがどうやってベティスの首を落としたのかの方が気になっていた。




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