第11章 恐怖の恍惚
「終わった___」
超龍神が空に消えたその時、ソアラが呟いた。
「どうしました?」
レミウィスの問いかけに、ソアラは立ち上がって幌から顔を出した。
「この大陸を覆っていた嫌な感じが消えたのよ。超龍神が倒れたんだと思う。」
ソアラは己の言葉に何の疑問も持っていない。それほど超龍神が倒れたことを如実に感じているのだ。レミウィスは彼女の感覚がどんどん研ぎ澄まされていると感じた。
「みんな無事だといいんだけど___」
「無事でしょう。強大な敵を打破できたのですから。」
心配しても始まらない。レミウィスの簡単な言葉に、ソアラも「うん」と言って頷いた。
「ふぁ〜___」
キュクィ車が揺れた拍子で、眠っていたリュカが目を覚ました。ルディーは寝入ったままだ。
「おしっこ〜___」
「あ〜こらこら!」
寝ぼけ眼のまま、その場で立ち上がってズボンをおろしはじめたリュカ。ソアラは慌ててキュクィ車を止めさせると、リュカを外へと連れ出した。
「竜の使いの顔でいると思ったら、すぐに母の顔だね。」
そんな微笑ましいソアラの様子を見て、ナババが笑った。
「そうですよ。彼女は戦士である前に、一人の母親。」
竜の使いである前に一人の人。ソアラは母であることを忘却しかねないと悩んでいた。しかしそれが全くの杞憂であることを、レミウィスに印象づける一こまだった。
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