1 祠の防人

 「もう、たまには自分から来てよね。あたしが誘わないと部屋にも来てくれないんだから。」
 ヘルジャッカルには似つかわしくない小綺麗なティーカップに手製の紅茶を入れて、ライディアはラングの前へと差し出した。
 「これといった用事がない。」
 ラングは素っ気ない返事でテーブルに肘を立てた。
 「あのねぇ___」
 「おいしいよ。」
 ラングのこういった言動はいつものこと。彼は自ら主導を取るタイプではないが、相手のペースも気にかけない。彼の言葉は正直なので、ライディアは褒められるとすぐ笑顔になった。
 「でしょ?愛情がこもっているからね。」
 ライディアは快活な笑みを見せ、ラングも彼女のとびきりの笑顔を見てまんざらでもない顔になる。
 二人はヘルジャッカルにいる者なら誰もが知っている恋人同士。ただ、ライディアがラングにべったりなだけだという噂もある。事実そう言った部分もあるが、それはラングの性格が沈着冷静で、悪くいえばシャイにも映るからだとライディアは考えていた。
 「?」
 ライディアは自分の紅茶と、もう一つティーカップをテーブルに置いた。
 「これは?」
 「メリのよ。」
 僚友メリウステスを悼み、ライディアは彼への死に水がわりの紅茶を立てた。立ち上る湯気が、黄金の獅子を象ったように見えた気がした。
 「優しいな、おまえは昔から。」
 「そんなことない。ただ、友達は大事にしたいって思う。いろいろあったからね。」
 ジャルコのような凶悪無比な八柱神もいれば、ライディアは酷く人間じみた言葉を口にする。彼女は間違いなく、八柱神の中でもっとも感情豊かだ。
 「ソアラの気配は感じているのか?」
 「___最近はよく分からない。」
 ラングの問いに少しだけ呼吸を起き、ライディアは答えた。
 「グルーの報告によればメリウステスを倒したのはソアラだという。」
 「___その話はやめようよ。せっかくこうして二人だけの時間が持てたんだから、もっと二人だけの話をしよう。」
 ラングの真摯で真正直なところは大好き。自分が少しお節介だからこそ、彼の側にいたい気持ちが強くなる。そしてラングはライディアの憧れだったし、甘えれば答えてくれる優しさもある。
 ここまで来るいきさつにはいろいろなことがあったが、ライディアはラングを愛している。でもたまに思うことがある。
 「よう、ここか。」
 何の前触れもなく部屋の扉が開いた。現れた卑猥な小男に、ライディアの顔が険しくなる。ジャルコはライディアを見もせずに、ラングに声をかけた。
 「大した用じゃないらしいんだがアヌビス様が呼んでる。忙しそうだな、これからだろ?」
 ベッドに視線を送り、ジャルコはニヤリと笑った。ライディアはムッとして眉をつり上げる。
 「いや、すぐに行く。」
 「ああそう。んじゃなライディア、鍵かけねえと不用心だぜ。」
 ジャルコは唇を引きつらせた笑みで、立ち去っていった。ライディアは舌打ちの一つもしたい気分だったが、ラングがあっさりと立ち上がって出ていこうとしたので慌てて手を伸ばした。
 「ちょ、ちょっと。まさか行っちゃうの?」
 ラングは振り向いてはくれるが、微笑みはしない。元々笑顔が少ない男だが、作り笑いの一つくらい覚えてほしかった。
 「おいしかった。また呼んでくれ。」
 ラングはライディアの止める声も聞かず、部屋を出ていった。扉が閉じられると、さっきまで暖かな空気で満たされていた部屋が急に冷えたように思えた。
 「___」
 ライディアは寂しそうに椅子に腰掛けた。テーブルに突っ伏し、流れた前髪に指を絡める。目の前にはメリウステスのために入れた紅茶が湯気を立てていた。
 「ねえメリ___あたしって愛されてないのかな___彼がただ優しいだけで、あたしにつきあってくれてるだけなのかな___」
 最近、時々そう思う。ラングはライディアがいちゃつけば、それに答えてくれる。料理を作れば、食べて極短い感想を口にしてくれる。望めば___抱いてくれる。
 でも彼からの要求がない。最近それに気がついた。ソアラのことでライディアが忙しくなり、ラングとべたつく時間が減ると、めっきり彼と会わなくなったのだ。それは彼のほうからは近づいてはこないということを証明しているかのようだった。
 「つまんないの。」
 恋ではあるけど愛は成立していないのかも。そんなことを考えて、ライディアは小さなため息をついていた。

 そのころ___
 「うっへい!すっごいで〜!地図にのらねい場所って言うし、なにかどおぼったら___」
 鼻先がネズミのように尖り、舌っ足らずな人型モンスター。なにげに八柱神候補になったマジャーノはアヌビスの命令通り、地図に載らない場所、西の冥海域へとやってきていた。
 「渦ばっかじゃん!」
 夜のほうがむしろよく利く目で、マジャーノは空から冥海域を見下ろしていた。なるほど地図に載らない場所といわれるだけあって、そこは異常なほど潮の流れが速く、巨大な渦がうねりを轟かせていた。
 「ずっげー!これじゃモンスターも住めねいでずな!」
 渦はこの海域一帯に点在しており、船がここにたどり着くのはまず不可能。マジャーノは空からやってきたわけだがそれも単純ではなかった。冥海域を囲むようにして上空に壮絶な風が吹き荒れており、そればかりか風が潮の霞を纏っていて視界が殺される。これでは空からの侵入も容易ではなかった。
 「ひいいい___」
 マジャーノの腕に捉えられ、十字架を胸に抱いた男が震えていた。彼はこの冥海域に最も近い岬に、小さな教会を構えている神父だ。マジャーノが幸運であると同時に、偶然とはいえ理知的だったのは「人に道を尋ねた」ことであった。
 「あれだに!?」
 「そ、そそそうです!」
 この神父は冥海域に島があるということを知っていた。彼は先祖代々から伝わる地図を持っていたのだ。彼の祖先は今まで誰も記すことのできなかった冥海域に、島があると示した。船で向かったのではなく、潮の流れや雲の動き、地殻の躍動、それらを長い年月をかけて計算し、冥海域のどのあたりにどの程度の島があるということを導き出してみせた。結局誰にも受け入れられないまま、地図は彼だけのものになった。それは今も変わらず、彼の一族は唯一冥海域を知るものとしてこの岬で暮らしてきた___というわけだ。
 「す、すんだなら帰してくださいよ!妻と子供が___!」
 神父は必死だった。島を知っていたがためにマジャーノに無理矢理連れ出され、上空で舵取りの役目をやらされた。
 「うむ!ごぐろう!帰ってよじ!」
 パッ___マジャーノは上空で神父を解放した。闇を劈く悲鳴を残し、神父は黒い渦の海へと落ちていった。
 「やっふぉーい!」
 神父のことなど気にもとめず、マジャーノは世界から見放された島へと飛んでいった。

 決して大きくないその島は周囲を断崖に覆われ、まるで地面の一部がそのまませり上がったかのよう。断崖の高さはさほどでもないが、荒い波が常に打ち付けている。これではたとえここまで船でたどり着けたにしても、空でも飛べなければ上陸は難しいだろう。
 「へい!」
 マジャーノは意気揚々と空から島に降り立った。人の腰丈程度まで鬱そうと茂った雑草の中、奇妙なものが目に入った。
 「なにでじょか、この柱?」
 まるで神殿跡を思わせるように、四本の柱が雑草にまみれていた。決して凝った細工があるわけではなかったが、白い石で丁寧に作られた円柱は、四つが正方形のそれぞれの角となるようにして立っていた。
 何のために使うものか分からないが、ごく最近ではないにしてもこの島に人がいた証だ。
 「変なのん。」
 マジャーノは柱に手を触れ、尖った鼻で臭いを嗅いだ。四つの柱の交点にも立ってみたが、特段何と言うことはなかった。
 「お!?」
 四本の柱から真っ直ぐ前、ともすれば雑草に隠れて分からないようなものがマジャーノの目を引いた。小走りでそれに近づいたマジャーノは、勢い余って大地の大口に飛び込みそうになった。
 「井戸!」
 雑草よりも低い縁でしかない苔むした井戸。小さな島のおよそ中央という位置に口を開けていた。
 「深いだにぇ。」
 井戸をのぞき込み、マジャーノは呟いた。周りが暗いこともあるが、井戸は底がないかと思わせるほど深く見えた。
 「ほっ。」
 マジャーノは雑草をむしり取り、井戸の中に放り投げた。草ははためきながらひらひらと井戸の底へと落ちていく。マジャーノは草が見えなくなっても井戸をのぞき込み続けた。
 「お、音がしない!」
 当たり前だ。
 「怖いでじね、でもマジャーノは常にポジティブ!」
 マジャーノは一人でポーズを決め、軽々しく井戸の中へと飛び降りた。
 ドンッ!
 そろそろ翼を広げてゆっくり降りようかと思ったのもつかの間、マジャーノの想像よりも遙かに速く底へとたどり着いた。
 「いだーい。」
 マジャーノの目前に道が広がっていた。井戸には水がなく、洞窟があった。
 「こ、こりぇはすげい!マジャーノ大発見!」
 目の前に延びる暗黒の道。マジャーノは飛び起き、小躍りしながら奥へと進んだ。
 そのころ___
 「何か来た。」
 橙の光の下で読んでいた分厚い本を閉じ、その人物は呟いた。輝いているかと思うほど美しく、澄み切ったブロンドは腰下まで伸びる。背中が開け、スカートには大きなスリットが入ったドレスのような装束。だがその生地は地界にはあり得ないほど強靱。
 彼女の装束、背中が開いているのには訳があった。
 「浅ましい物の怪が___またやってきたか。」
 澱みのない白肌は、爽やかな陽光の下でこそ輝くもの。だが彼女は閉ざされた空間の中にいた。碧の瞳は見る者を戒めるような鋭い眼光を宿し、強い意志、使命感を滲ませる。高い鼻、緊張感のある唇、彼女はその美しさのみならず、外貌で大きく人の目を引く。
 何よりも、その背に煌めく純白の翼で。
 「___」
 どこか物憂げなまでの無表情で、彼女は壁に立てかけてある槍を取った。槍もまた白く、刃は緩やかな曲線で二枝に分かれ、付け根には竜を象った飾り物があった。高価な、地界の武器屋では到底お目にかかれなさそうな一品。尺が長く、女性が使うには大きすぎるようにも見えたが、彼女にはむしろ調度良かった。
 ___
 「こっちだぎ!」
 洞窟を下へと沈み込んでいくと、仄かな光と共に景色が変貌した。剥き出しの岩肌は消えてなくなり、斉一な石造りの壁が広がる。廊下と呼ぶのがふさわしいそこは、壁のランプに灯されて暖かな光が広がっていた。
 「むむむ。」
 ランプの光にマジャーノは目を眩ませる。だがこの光は少し輝きかたが普通ではない。あまり光が強くないこと、そして時折強く光ったりそうでなかったり___
 「こりはもじかじて凄っい大発見!?」
 「そうかもしれないな。」
 「やっばり!って誰!?」
 廊下の少し先の角から、大きな影が飛び出す。影は確かに伸びてはいたものの、現れた彼女の身の丈も驚くほど。現に人型モンスターのマジャーノよりも大きかった。
 「でかっ!」
 マジャーノは賑やかな声で言った。その言葉を聞いたとき、翼の彼女は廊下に仁王立ちになって、槍の柄を床にたたきつけた。
 「ご挨拶だな。いきなりそれか___」
 彼女が翼を開くと、それは橙の光に照らされて燃えるように輝いた。
 「は、羽!ってごとは天族!?」
 マジャーノは飛び上がって叫んだ。その一言が彼女の体に殺気を浮かび上がらせた。
 「あたしたちのことを知っている___その黒い服といい、いびつな顔といい___招かれざる客と言うところか。」
 天族と呼ばれた彼女は揺らめくように回転させながら槍を掲げ、マジャーノを睨み付けた。
 「こごにはやっばり大事な何かがあるんだに!」
 マジャーノも戦劇を勝ち抜いた身。彼女の戦闘態勢を感じて緊張を高めた。
 「ああ、あるとも。あたしはそれを守っている祠の防人。人と話すのは久しぶりだから少し楽しみにしていたんだが、そういう相手じゃないな。」
 風が動き出した。翼を撫で、彼女の後方からゆっくりと。
 「マジャーノの強さを見せでやるぞ!大女!」
 風と共に彼女は翼でその身を包んだ。
 「あたしはミキャック・レネ・ウィスターナスだ___大女じゃない!」
 風にその身を任せるように、ミキャックと名乗った彼女が宙に浮いた。そのまま滑空して一気にマジャーノに迫る。
 「いえい!」
 迎え撃つようにマジャーノは爪を剥き出しにし、ミキャックを引っ掻こうとした。しかしミキャックは翼を大きく開いて翻ると、天井ぎりぎりまで舞い上がってマジャーノの後方に降り立った。
 ギュン!
 ミキャックは容赦ない。後方に回るや否や、マジャーノが振り返るよりも速く槍で背から一突きにした。
 「うぎぃぃぃっ!」
 背から腹へと白い刃はマジャーノを貫き、緑の血が槍を伝って流れ落ちた。勝負あった___かのように思えたが、それは違う。
 「っ!」
 マジャーノの細長い尻尾が鞭のように撓り、ミキャックを襲う。腕でその一撃を防いだミキャックだが、痛烈な打撃にすぐさま皮膚が赤み帯びた。
 「フリフリフリ!」
 マジャーノ腹部でうごめいた肉が槍の柄を包むように食い込んでいく。彼のポジティブ戦法を可能にするのがこの驚異的回復力。奇声を発しながら尾を振るい、マジャーノはミキャックを襲う。槍を抜いて距離を置こうとしたミキャックだが、マジャーノの腹に捉えられてびくともしない。だがそれならそれでやりようがある。
 「ドラゴフレイム!」
 蛇が這うように、炎の帯が槍を伝ってマジャーノの腹部に雪崩れ込んだ。
 「うわちちち!」
 引いて駄目なら押してみろ。ミキャックはマジャーノの尾を片手で掴むと、槍を一気に押し込んだ。槍はマジャーノの背を貫通し、腹から飛び出して抜けた。
 「こんにゃろめい!」
 マジャーノは怯まない。生命力に任せて火の燻る体のまま槍を掴んで疾走し、ミキャックとの距離を取った。
 「これでマジャーノ大有利!」
 「そう思うなら攻めてきたらどうだい?」
 ミキャックは挑発的な笑みを見せた。彼女は全くの丸腰で、武器は何も持っていない。槍もマジャーノの手にある以上、彼に躊躇う理由はなかった。
 「一気に倒じで八柱神になっちゃる!」
 すでに傷口の塞がっているマジャーノは、槍をクルクルと回しながらミキャックに突進した。状況はミキャックにとって不利なはず。しかし彼女は顔色一つ変えなかった。
 「拳があれば十分。」
 己の持つ武器のなんたるかは本人が一番知っている。マジャーノは鈍感なのかなんなのか、少なくともこの閉鎖的な祠の中で彼女はあの槍を清めるのを忘れたことはない。彼女はここで、やってくるであろう魔の手から「大事なもの」を守っているのだ。
 「あぢぢぢぢ!」
 マジャーノが突然叫び、槍を放り出した。彼の掌は真っ赤に焼けただれ、微かな煙を上げていた。神聖なる槍は魔を拒絶する効果を持っていたのだ。
 そしてミキャックはすでに彼の目前にいた。
 シュッ___
 しなやかに、拳がマジャーノの頬にめり込む。同僚のモンスターの拳に比べればずいぶん軽い女の一撃。しかしミキャックは決着を確信していた。
 「呪拳___プラド!」
 一瞬だけ拳が輝くと、拳が触れたのとは逆の頬が風船のように急激に膨れあがった。そして___!
 ボンッ!!
 マジャーノの頬が破裂した。彼は何が起こったのか全く分からない。ただ細腕の拳に殴られた瞬間、口の中あたりで何かが爆発した感覚だった。
 「あばば___!?」
 口が大きく裂け、顎がダラリと落ちた。舌が焼け焦げて言葉がうまく出ない。
 「ドラゴンブレス。」
 ミキャックの拳が白い光に包まれ、消える。オーラのように微かな白い霞を纏った彼女の拳は、それだけで斧の一撃以上の破壊力を秘めている。
 「バイバイ。」
 ミキャックは拳をマジャーノの眉間に叩きつけた。痛みに歪んだマジャーノの顔にすぐさま異変が生じる。眉間から目の周りへと血管が膨らむように浮き上がり、蠢きはじめた。そして間もなく、毛穴から噴き出した炎で彼の顔面は壮絶に燃え上がった。
 「ぃぃぃぃ___!」
 マジャーノは悲鳴とも取れない声を上げて悶え苦しみ、倒れてのたうち回った。脳の奥底まで焼き尽くされたか、やがてぴくりとも動かなくなった。
 「悪く思うな、これがあたしの役目だ。」
 ミキャックはマジャーノの側に跪き、拳を握った。呪拳と名付けた彼女の拳には呪文が極限まで凝縮され、ぶつけた衝撃と共にそれを相手の内側に流し込む必殺の技。対象との距離に左右されるプラドなどの呪文は、至近距離で放てば放つほど破壊力を高めることができる。彼女の拳は、それを究極の距離感で放つことができる。
 「ディヴァインライト!」
 拳が黄金の霞に包まれると、彼女は仰向けに息絶えているマジャーノの腹にパンチをたたき込んだ。すぐさま彼の体の内側から、芽吹くように光の柱が幾重にもなって立ち上り、闇にまみれたモンスターの体を灰に変えていった。
 「っ___」
 立ち上がったミキャックは額に手を当てて首を振った。呪拳の破壊力は壮絶だが、呪文の凝縮に要する魔力は通常の比ではない。高い破壊力を秘める反面、魔力の浪費が激しく、初歩的な呪文でなければ拳に込めることができないという難もある。ただそれでも十分に難敵を駆逐するだけの威力があるのは確かだ。
 「こいつは何をしにここに来たのか___八柱神がなんだとか言ってたな___」
 ミキャックは槍を拾い上げ、踵を返して祠を奥へと歩き出した。
 「外はどうなっているんだろう、気にはなるけどあたしはここを離れることはできない。ゼルセーナ___あいつにいいように翻弄されたあたしは、絶対にここにあるものを守り続けなければ。」
 彼女は数年前からここに居続けている。この世界が闇に包まれた頃から。
 コロコロ___
 ミキャックのいなくなった廊下。灰の中から黒い球が転げだし、やがて罅入って砕けた。
 「やられたな、マジャーノの奴。」
 その時、ヘルジャッカルの玉座でアヌビスがぽつりと呟いた。
 「だが冥海域の場所は分かった。そして、そこには何かがあり、誰かがいる。マジャーノも決して弱くはないが、それを葬り去る力を持ち、なおかつ闇の汚れを見逃さない存在。」
 やはりあそこには竜神帝に関わる何かがある。マジャーノにいわゆる発信器を取り付けておいて正解だった。
 「やはり律儀な奴だ。」
 アヌビスは彼の十分な働きに、賛意を込めて拍手を送っていた。



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