第6章 前触れ

 ローレンディーニからの旅人が重大な情報を持ってやってきたのは、あの大火から二日後のことだった。
 「今更よ___信じられないわ。」
 アウラールは憂鬱な顔で金髪に指を絡ませた。
 「でも可能性がなかったわけじゃない。ただそれにしたって___」
 ソードルセイドは全国民をあげての復興作業の真っ最中。生き延びた長屋の人々は煉瓦街で暮らし、復興作業は両者の協力で行われた。それはソードルセイドが真に一つになるためのきっかけだった。
 ただ、その盛り上がりさえもかき消すような情報を、旅人は持ち込んだのだ。
 「カルラーンがケルベロスに占領された___次はゴルガかクーザーか___」
 「ソードルセイドかもしれないでしょう?」
 と、アウラール。
 「どちらにせよケルベロスとは接触を取らなくちゃなんねえ。長屋街の復興には援助が必要だ。」
 「そうね、資材が足りないわ。」
 ソードルセイドの玉座は二つ。一つは国王の、もう一つは王妃のもの。だが今は百鬼とアウラールが座る。国政を知らない百鬼の補佐に、アウラールの力は欠かせないとのソアラの判断からだった。
 「ソードルセイドとケルベロスは比較的友好な関係にあるわ。ケルベロスの管轄に入るとしても、復興作業の支援を要求するべきじゃないかしら。」
 「そうだな。使者を送ろう。」
 「人選は?」
 アウラールの問いに百鬼が首を捻ったところで、彼はやってきた。
 「なら俺が行きますよ。」
 唯一無傷だった男、棕櫚が。




前へ / 次へ