第5章 時代を超えた決戦
石造りの牢獄には小さな格子窓の付いた扉がある。牢獄の中には一切の灯りがなく、頼りになるのは廊下から差し込む蝋燭の光だけ。外に比べれば少しはましだが、それでも空気はひんやりとしてかなり肌寒い。
「迂闊だった___」
ソアラはただ部屋の隅で、壁に凭れながら小さく呟いた。あのとき、背後から迫った忍びに気が付かず、口に宛われた麻酔薬で瞬く間に意識が途絶えた。そして彼らのアジトへと運び込まれ、紆余曲折へて今は牢獄に監禁されている。
「それにしても___なぜ呪文を___」
空腹感はない。先程四条と食事をとった。彼に全てを見透かされたソアラは、彼が示した道を受け入れるしかなく、少なくともこの牢獄から脱出することは許されなくなった。
「___」
右手を見る。人差し指につけていたはずの炎のリングもない。魔力を表に出そうとも叶わない。
いつもなら、プラド一つでこの牢獄も脱出できよう。しかし今はそれができない。四条が封印呪文マグナカルタを使うとは思ってもみなかったのだ。
全ては彼女にとって誤算だった。逆に言えば、四条の方が上手だったということだ。
「はぁ___」
ソアラには、牢獄の中でじっと時を待つことしか許されなかった。
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