第4章 血に飢えた鬼
暗闇の中、小雪降るソードルセイドの長屋街___
袖に稼いだ金を入れ、懐だけは暖かくした男が一人プラプラと自宅に向かっていた。
「いけねぇや、かかあに叱られちまう。」
雪で酔いも抜けてきたのか、男は急ぎ足で自宅へと向かっていた。夜の街並みに往来はなく、寒さが余計に際立った。
「お?」
正面から笠をかぶった男がやってくる。侍風の男で、腰には一本の刀。俯き加減の顔は見えず、ただ背中の当たりに長髪の先が揺れていた。
二人は何気なくすれ違うはずだった。しかし___
「御免。」
侍の刀が夜を切り裂く。一瞬の煌めきがほろ酔いの男の動作を止めた。悲鳴さえ与えない、深く精密な一撃は男の喉笛を切り裂き、大量の鮮血が雪を赤く染める。
侍は走り去ることすらせず、ただ刀を紙で拭い、それさえも投げ捨てて立ち去っていった。
これが辻斬りだった。
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