2 帰還

 「今更だけど___大変なことになってきたわね。」
 ゼルナスとサザビーは護衛もつけずに、延々続く階段を上っていた。
 「あのジュライナギアのボスが蘇ったんでしょ?」
 「まあそんなところだ。その封印があったのがこのクーザーマウンテンじゃないかって思ったからこうしてきた。」
 サザビーは煙草を取りだしかけ、自重するように自分の手を叩いた。ここで煙草を吸うのは疚しいことだ。
 階段はおよそ五百段は続くだろうか、自然が作り出した山と伝えられるクーザーマウンテンだが、このように綺麗な円錐形では到底信じられない。そればかりか山は巨大な大理石。最上段の神殿さえ山を削って作られたという。常識的ではないこのクーザーマウンテンが神の山と崇められ、法王の住居となるのは極当然のことだった。
 「しかし大層なところだなぁ、ここは。」
 サザビーは振り返って、階段からの眺望に溜息を付いた。
 「ここに来るのは三度目だけど___いつ見てもここだけ別世界。ま、おかげでクーザーは永世中立を名乗れているわけだから感謝しないとね。」
 ゼルナスは屈託のない笑みを見せる。公務で張りつめていた彼女にとって、これはサザビーとのピクニックに近い。もとより年齢以上に大人びていた彼女を、サザビーは暫く会わないうちにより一層大人びたと感じたのだ。それは彼女が日々に神経を費やした証とも言える。
 「俺に会えなくて寂しかったか?」
 サザビーはそれを悟って問いかけた。
 「寂しい?馬鹿言わないでよ、風のリングがあなたの手にある限り、私はいつでもあなたを見ているんだからね。」
 彼がその言葉にドキッとしたのは言うまでもない。ローレンディーニで見られちゃいけない現場があったのだから。
 「急な謁見申し立て、まことに無礼とは存じましたが___」
 「口上は無用だフィラ・ミゲル。」
 巨大大理石の頂には、純白の神殿が建っている。神殿の入り口には、法王に仕える白装束の神官たちが立ち並ぶ。階段の中途には守衛はおらず、山の入り口に厳重な検問があるだけだ。
 「法王様がお待ちである。早速入られよ。」
 神官長のパオロ・ルビアーニは体格の良い大男。角張った顎と全身の筋肉は、彼が神官長である以上に最高の護衛官であることを伺わせた。
 「ここが法王堂な___」
 神殿の内側は一面の白。天然の大理石をそのままに、飾り物も、絨毯さえない。あるものといえば所々に燭台が掲げられているだけで、神々しくはあるがあまりにも飾り気のない場所だ。
 (うひ〜、俺はこんな所にゃ住めねえぞ。)
 「サザビー、法王様よ。」
 ゼルナスが呟いた。正面の玉座に痩せ形の男が座っている。長髪に口ひげを蓄えた男。法王というのだから老人を想像していたサザビーの予想は覆された。
 「法王、ランス・ベルグメニュー様である。」
 ルビアーニの太い声が神殿の壁を共鳴する。サザビーは一つ息を飲んで姿勢を正した。
 「お久しぶりです、法王様。」
 彼より一歩前に出てゼルナスは深々と礼をした。
 「本当に久しぶりだな。近いのだからちょくちょく来いと言っただろ。」
 法王ランスは荘厳な空気を不意にするように、軽い口調で言った。サザビーは呆気にとられて思わず首をすくめた。
 「はぁ、ですがまだ国の仕事になれないものですから___」
 「暇なんだよ。そろそろ一般人にもここを開放しようかと思っているくらいだ。」
 「ほ、法王様___権威に関わります。」
 「黙れ。私は権威を主張するのにも相手を選ぶ。」
 ランスは顎を突き出し、立派な口ひげを指で摘んだ。
 「して、その男は誰だ?結婚でもするのか?」
 「彼は___」
 サザビーはゼルナスよりも前に進み出て、法王の前に跪いた。
 「ポロ・シルバの息子、サザビー・シルバです。」
 「なぬ?」
 ランスは眉をひそめた。
 「寄れ。」
 そしてサザビーを手招きする。それを見て、ルビアーニが拳に力を込めたことにサザビーは気付いた。主人に振り回される護衛官というのも大変だ。
 「いやいや、ポロに息子がいたのは知っているぞ、奴がそれをひた隠しにするつもりでいたこともな。いや、おまえがなぁ___なるほど面影はありそうだ。あいつと同じで女ったらしの顔をしている。」
 そして彼に顔を近づけ、じっくりと眺めはじめた。
 「ハハハ___」
 サザビーはランスの鼻息を鬱陶しく感じながらも、緊張感のない笑顔を見せた。
 「いや、私もゴルガの生まれでな。それからクーザーに移り住んで、ここの神官を勤めた。もう何年前だろうなあ、まだおまえの祖父が国を治めていた頃だ。」
 「___すると法王様は父よりも___」
 「年か?上だ。見えぬだろ、若いのが自慢だ。」
 法王は背もたれに身を預け、サザビーは玉座から離れた。
 「して今日はなに用があって来た?まさかフィラ、この男を紹介するためではあるまい?」
 「お目通りを申し立てたのは私です、フィラ女王にはその仲介を頼みました。」
 ランスは興味深げな笑みを浮かべた。久方ぶりに愉快な話が聞けそうだという期待感だろうか、彼の目は非常に生き生きとしていた。
 「申してみよ。」
 「少々長い話になります。お教えしたいのは、私が仲間と共に歩んできた道のりと、とある邪悪の封印についてです。」
 そしてサザビーは自らが歩んできた冒険の要旨、超龍神や魔族たちのこと、そして四つの均整と六つのリング、それが封じているものについて、ランスに細かく語った。ランスの表情は驚くほど豊かで、彼の感情の変化が逐一見て取れるのは面白かった。
 「___なるほど、するとおまえはその四つの均整が破壊されたことにより、この法王堂に何らかの異変がないかを調べろと言うのだな?」
 「そうです。邪悪にまつわる何らかの手がかりを求めて参りました。」
 「無礼を申すな!」
 怒声を上げたのはランスではない、ルビアーニだ。彼は額に血管を浮き上がらせ、憤りをぶちまけた。
 「この神聖なる法王堂に邪なるものが巣くうなど、侮蔑甚だしい!」
 「静まれ、ルビアーニ。」
 「しかし___!」
 憤懣やるかたないルビアーニだったが、ランスに睨み付けられては口を挟むことさえできない。
 「おまえが言う均整が破壊された日だが、法王堂そのものに異変はなかったように思える。だがここにはまだ私の知らない場所もある。どこにどんな特殊回廊があるやも分からぬ。調査はしてみよう。」
 「ありがとうございます。」
 「ただしだ___」
 ランスは片方の眉をつり上げ、肘掛けに頬杖を付いてニヤリと笑った。
 「連絡が付かないのでは困るからな、おまえはゴルガに帰って即位しろ。それが条件だ。」
 「は___!?」
 思いもよらない展開。サザビーは口元を引きつらせた。
 「故郷を蔑ろにするのは良くないぞ、サザビー。私が書状を書いて遣わす、良いな。」
 「ははは___」
 ポポトルの総帥としてストレスのたまる日々を送っていたサザビーは、王という立場にトラウマに近い嫌悪を感じている。しかしいつまでも自由に拘り続け、王家の血筋を封印し続けるのは我が儘というものだろう。

 サザビーがゴルガに向かって旅だったそのころ___
 世界は大きく動き始めていた。
 カルラーンの上空に赤い悪魔が飛来し、降伏を勧告した。
 トルストイ・ワーグナーを初めとする白竜自警団の実力者たちは捕虜として捉えられ、街にはケルベロス兵が雪崩れ込み、あっという間に制圧した。彼らが何故こうも従順になったか、それはアンデイロが燃えているとの噂からだった。
 「無血占領への道は、降伏のみである。」
 トルストイには降伏宣言を飲むしか道はなかったのだ。

 そして時を同じくして、ケルベロスの本土でも大きな動きがあった。
 ガチャリ___
 馬車の扉が開き、しなやかに現れる。白に印象を改めたはずの彼女は、己が立つ舞台のために、再び黒い装束に身を包んでいた。
 「また___帰ってくることになるとは___」
 再びケルベロス城の入り口に立つことの感慨はない。むしろアドルフ・レサの真意が気になって、フュミレイの顔つきは険しかった。
 「よくぞ戻られた、フュミレイ・リドン。」
 若いリュングベリは毅然とした態度で彼女を迎えた。フュミレイはハウンゼンの後任にこれほど忠実な男を招き入れた事実に、今はアドルフの意志により国が動かされていると感じる。だがそうすると余計に、あれほどこちらの心境を察してくれたアドルフ・レサが、この期に及んで自分を呼び戻した理由が分からなかった。
 「陛下がお待ちである。付いてまいれ。」
 「はっ。」
 フュミレイは歩みだした。風が吹き抜けると、彼女の肩はあまりの肌寒さに少しだけ震えた。フィツマナックとはまるで違う。やはりケルベロスは寒いところだ。
 「___」
 ケルベロスの様子は一月前と変わらない。フュミレイにとっては見慣れた景色が、アドルフの玉座まで続いていた。そして謁見の間の殿に構えていたアドルフも、何ら変わった様子はなかった。
 「行け。」
 謁見の間の長い赤絨毯を、フュミレイは一人で歩かされた。その間人々の目は彼女に集まる。だが彼女の意識は正面のアドルフに集中していた。
 (ますます大人びたか___?)
 裁判の頃からアドルフの成長には驚かされていた。しかしこの一月の間に少年は更に凄みを増したというか___半ば貫禄じみたものまで感じる。これが血筋の成せる技か?
 「___」
 アドルフが笑みを浮かべた。何故か分からないが、その微笑みにフュミレイは好感を得なかった。それは不気味なほどに艶っぽく見えたのだ。
 (いいわね___)
 それはフェイロウが己の感情を表に出した笑みだった。彼女はフュミレイの体型、若さ、顔立ち、脆さと強さの同居したような危うい視線、全てに惚れた。隠しきれない強欲が艶っぽい笑みになってしまった。
 「フュミレイ・リドン。恩赦を受け、ただいま帰還いたしました。」
 フュミレイはアドルフの前に跪き、平伏した。
 「うむ、待っていたぞ。面を上げよ。」
 フェイロウはアドルフに徹し、少年の顔でしっかりと頷いた。
 「貴公を呼び戻したのは他でもない、また我が参謀としてその才を存分に発揮して欲しいからだ。」
 率直でわかりやすい言葉だ。フュミレイは素直に感銘した。
 「ありがたき幸せ。しかしながら陛下、何故急に?」
 「ケルベロスがケルベロスとしての活動を起こすためだ。」
 フュミレイはアドルフの瞳を真っ直ぐに見つめたまま、小さく拳を握った。
 「それはすなわち___世界侵略。」
 「そうだ、よもや異論はあるまい。もはやベルグランはカルラーンに向けて飛び立った。」
 フュミレイは結局このようにことが進むことを止められなかった自分が悔しかった。フィツマナックにいる間も世界は確実に流れているのだ。
 「陛下、私は依然として世界侵略には反対です。その気持ちは変わりません。」
 「勅令であっても受け入れられぬのか?」
 「フィツマナックに戻るか、それさえも許されぬのなら___いかなる処分も受けましょう。」
 「頑なな___何故そこまで拒む。」
 フュミレイは神妙な顔になってしばし俯く。しかしすぐに顔を上げ、生気の籠もった左目をアドルフに向けた。
 「我々が人を支配することは難しくないでしょう。しかし、それ以上の者を支配することは難しいのです。」
 (へぇ___)
 フェイロウはフュミレイが思った以上に「こちら」の事情に詳しいことを知る。アドルフの情報では、彼女は切れる人物で、血も氷るような厳格さと、暖かな優しさを持ち合わせている。彼にとっては美しく頼りになる姉、いやそれ以上、初恋の感情にまで達するところか。そしてなにより、魔法使いであるところがフェイロウを喜ばせた。
 (利用できそうねぇ___色々と。)
 フェイロウはまた艶っぽく笑い、フュミレイはアドルフらしからぬ笑みにゾッとする。
 「人以上の存在とはなんだ?」
 「明言はできませぬが、私より魔力を奪い去った存在がその一派です。」
 アドルフは腕組みをした。
 「だがフュミレイ、我々は人間であり、人間には人間の政治と秩序がある。我々はその中で動いている。未知の者までに意識を傾ける民はいない。」
 「仰るとおりです。私も自ら未知の者に直面したからこそ、強い危機感を抱いているに過ぎません。確かにそれがなければ、ケルベロスの活動に批判的になりはしなかったでしょう。」
 「ではケルベロスが世界を制することは可能だと考えるのだな?」
 「可能です。しかし長くは続かないでしょう。未知の存在は確実に力を蓄えているのです。まだその牙を隠してはおりますが___」
 アドルフは一つ目を閉じ、今度はそれらしい笑顔で目を開けた。
 「正直を言うと怖かったんだ。おまえを敵に回すのが。」
 「陛下___?」
 「おまえだけはいつまでも僕の側にいて欲しかった。それが正直な気持ちだ。」
 アドルフが頬を赤らめてまでそんな言葉を語ってくれる。型式張った私などと言う一人称ではなく、一人の青年として僕とまで言った。そんな彼の誠意にフュミレイの心が揺らがないはずがなかった。
 「陛下___勿体ないお言葉___!」
 「私の側にいて、私を見守ってくれ、フュミレイ。それだけでいいんだ。」
 「はっ___!」
 フュミレイは最敬礼を以て答え、アドルフの顔をしたフェイロウはしてやったりの微笑を浮かべていた。
 「回りの者を納得させるために、おまえに幹部特権を与えることはできない。色々不自由もあろうが、何か問題があれば私に言ってくれ。メイドにはセルチックをつけよう。」
 「お心遣い、感謝いたします。」
 「それと___」
 フェイロウには一つの妙案があった。
 「魔力の件は私が総力を挙げて解決策を思案させよう。」
 これはそのための布石だった。

 「荷物は中へと運んでおきました。」
 セルチックがフュミレイを部屋へと案内する。相変わらずのポーカーフェイスだが、セルチック自身はフュミレイの帰還を喜んでいた。
 扉の向こうは、彼女が逮捕された当時の部屋と変わっていなかった。家具類を処分していなかったことはフェイロウの意志とは無関係。これこそアドルフがかねてから、フュミレイの帰還を望んでいた気持ちの現れなのだろう。
 「すぐにお食事をお持ちいたします。」
 「いや後でいいよ。少し話でもしないか?セルチック。」
 「___はい。」
 セルチックはポーカーフェイスなりの控えめな笑顔を見せた。フュミレイに限れば、鉄仮面の貴重な笑顔を何度も目の当たりにしているのだ。
 「元気そうでなによりだよ。」
 「そんな___私はフュミレイ様の元におれなくて寂しゅう御座いました。」
 セルチックは屈託のない笑みで語った。メイドの領分を脱した発言だったが、フュミレイはそれを責めたりはしない。
 「おまえは私の何がそんなに気に入ったんだ?」
 「こうして私と語らってくれるところです。メイドをメイドとして扱うだけでなく、人として接して下さいます。」
 セルチックはクリスヴェラを空け、フュミレイのグラスに注いだ。
 「おまえの前の主人は___ドノヴァン・ダビリスだったな。」
 「はい。」
 そこで暫く会話が止まった。セルチックは自分から何かを語ろうとはしない。
 「私がいない間は陛下のメイドをしていたそうだな。」
 「___はい。」
 セルチックの目元に若干の影が差したようだった。普段表情に欠けるだけに、些細な変化が目に付く。そして彼女が顔色に出すというのはよほどのことだ。
 「なにかあったのか?」
 「___いえ。」
 「言ってみろ。」
 フュミレイは語気を強めセルチックを見つめた。しかしこの手の威圧は彼女に通じない。
 「嫌です。」
 セルチックにとってあの事件は失態だ。親衛隊の詰め所に詫びを入れ、メイド仲間からは疲れているなら休むようにと勧められる始末。こんな無様な報告をフュミレイにしたくはなかった。
 「分かった、別の話をしよう。」
 フュミレイはセルチックから視線を逸らし、クリスヴェラを口に運んだ。頑なな彼女に無理強いは無意味だから。

 その日の夜。
 「お疲れさまでス。」
 「ほんと、お疲れだったわ。」
 自室に帰るなりフェイロウはドアの鍵を落とし、ベッドに歩み寄るまでの間に、流れるようにアドルフから元の姿へと戻った。
 「どうだった?」
 「カーツウェルさんが五日後にはできると仰っていましタ。」
 「遅いわ。三日でやらせなさい。必要なものさえ用意してもらえれば、後はあたしでできるんだから。」
 「ではそう伝えておきまス。」
 フェイロウはポンポンとベッドの上に服を脱ぎ捨てていく。
 「お風呂入ってくるわ。」
 「ア、まだ用意しておりませン。」
 フェイロウはニヤッと笑ってローゼンスクを振り返る。彼女の手は激しくスパークしていた。

 翌日、執り行われる任命式のためにフュミレイは支度を整えていた。
 「___」
 用意された士官服の襟を正す。黒を基調として、襟や袖口に白が配され、胸元に赤紫のラインが入っている、彼女らしい色彩だった。
 コンコン。
 「誰だ?」
 「セルチックです、お髪を整えに参りました。」
 「入れ。」
 セルチックはいつもと変わらない様子でやってきた。一方でフュミレイは昨日のセルチックの態度が気になっていた。
 鏡台の前でセルチックは素早く髪を整えていく。右眼のことにも動揺すら見せず、無言で前髪を揃えて隠してみせた。
 「相変わらず手際が良いな。」
 「ありがとうございます。」
 暫く沈黙のまま作業が続く。フュミレイは鏡越しにセルチックを見つめながら言った。
 「敢えて聞くが、陛下との間に何事かあったのではないのか?」
 まただ。本当に一瞬だったが、セルチックの手が止まった。
 「いいえ___」
 だがセルチックは一言で切り返し、また変わらずに髪に櫛を通していく。
 「___嘘は許さぬぞ。処分も検討しなければならない___」
 セルチックに動揺はない。ただ黙ってフュミレイの髪を礼装に相応しく整えていく。フュミレイが鏡越しに彼女を睨んでも、まったく手先の狂い一つなかった。フュミレイは身体の力を抜き、一つ溜息を付いた。
 「頑なだなお前は___分かった。信じよう。」
 鏡に映ったフュミレイの微笑みが視野に入った。その笑みも、信じるとの言葉も、セルチックには重苦しいものだった。
 任命式を経て、フュミレイは正式にケルベロスへの帰還を果たした。肩書きは「非特権相談員」。アドルフの補佐として側に付く、いわばアドバイザーである。
 だがこれはカルラーンの無血占領に比べれば、実に些細なニュースだった。
 ケルベロスの宣戦布告。それが世界に発信されるにはもう少し時間が掛かる。カルラーンから走った使者が隣国にたどり着くまでは___




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