第2章 雪原の決戦

 「うっはー!やっと見えてきた!あれだよあれ!」
 ローレンディーニからソードルセイドへの最短距離は、フリスト山脈を越えることだ。しかしこれは雪と格闘しながら進む、なかなかに過酷な道である。よって安全策をとって山脈を北方に迂回し、ミエスク方面より延びる街道を使って海岸沿いに進むことが望ましい。無駄な消耗を避けたかったライたちも、遠回りではあるが雪が少ないこの道を進んでいた。
 「あれがソードルセイド___遠目に見ても変わった都市ですね。」
 棕櫚の言うとおり、ソードルセイドの二つの顔は遠くから見ればより如実だ。街の北側には赤煉瓦の背の高い建物が建ち並び、一直線の空白を境に南側には茶色の群衆が見える。城は中央の空白の奥に、両方の街に跨るようにして立っている。世界中の城の中でも最も歴史が浅いだけのことはあり、実に機械的な作り。雪が積もらないように切り立った屋根が特徴的だ。
 「うははーっ!」
 やっとこさ目的地が見えて有頂天になったのか、街道の横にかき集められた雪にライは身体ごと飛び込んだ。雪はおよそライの膝下辺りまで積もっている。フリスト山脈からソードルセイド側に出れば、街道さえも雪で覆われている。そこで近隣の宿場で売られているのがスキーだ。
 「ぷはっ!」
 「やめなよ、危ないよ。」
 雪から顔を上げたライに、苦笑いしてフローラが言った。この寒さの中で良くやるというのが本音だろうか?ミエスクで買い込んだ防寒具をもってしても息は真っ白だ。
 「なんかさ、街の回りはこんなに雪だらけな割に、街の中って雪がないよね。」
 そのライの一言で、笑顔になったのは棕櫚とフローラだった。
 「もしかして。」
 二人は互いの顔を見合わせた。
 「ライ、急ごっ!」
 フローラはうまく立てないでいるライを雪の中から引き起こして、微笑んだ。
 「どうしたの?」
 「街に雪がないのは、お湯が巡っているからよ!」
 「そう言うことです。温かいお湯が俺たちを待ってます。」
 「お湯?」
 ライはまだピンとこないらしい。慌てて雪を掻き、颯爽と滑っていく二人を追いかけた。




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