第8章 戦慄のグレルカイム
ゴルガより遙かに西方。大陸の西南端。大砂漠地帯の更にその奥に、力強き者たちだけが辿り着ける楽園があるという。その名はグレルカイム。かつては砂漠の生命たちと共存する神秘の民族が住む土地として、見識の豊富な者たちに知られていた。現在は新興宗教アクトゥマ教の総本山として、ゴルガを中心にその名を轟かせていた。
「アクティーノたちよ!神に祈りを捧げるのだ!我らが祖と崇める「ゴルガンティ」に心を傾けよ!」
台座には白装束を纏った細身の男がいる。カールした長髪に顔中を埋めるような髭。その男、教祖ベルゾフは、ドームに結集した信者たちの前で良く通る低音を響かせた。
問題なのは彼が崇めている神の名前である。そして___
「しっかしさぁ、均整を追いかけてきたってのに、何で『ゴルガンティ』なんてのに遭遇しちまうんだ?」
ドームの人混みの中に彼らはいた。
「ゴルガンティと言えば、あのジュライナギアと並ぶ三魔獣___」
回りの信者たちと同じように白装束を纏っていた。
「あれがそうなのかなぁ___」
ライ、百鬼、サザビーはアクトゥマ教の一員となってグレルカイムの中心地に足を踏み入れていた。ドームに集まった信者たちはそのほとんどが屈強な体格を持つ男たち。血気盛んに野太い雄叫びを上げる。
その向こうに見える台座にはベルゾフが立ち、その背後に巨大な石像がある。
だが女神像ではない。
巨大な魔人が口を開け、牙を剥く姿だった。
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