第7章 大修業月間!

 バドゥルの集落はまるで大地震に見舞われたかのように倒壊したが、バドゥルの人々はその半数が無事に生き延びることができていた。しかし彼らの大半が何らかの傷を負い、そして族長の死を嘆き悲しんだ。族長ばかりではなく、次の族長候補と呼ばれた人々まで、リュキアの毒牙に掛かってしまったことも大いなる悲しみである。
 結果として災いを呼び込んだソアラたちは彼らに嫌悪され、恨みを抱かれた。誰も彼らに労いの言葉など掛けようともせず、バドゥルに止まることを酷く拒んだ。投げかけられるのは罵倒の言葉ばかり。
 「次の方___」
 フローラは自分の傷さえ癒しきれないうちから、傷ついたバドゥルの民の治療を買って出た。バドゥルの人々ははじめこれを酷く拒んだが、我が子が酷い傷を負った母が願い出たのを皮切りに、フローラの回りには人だかりができていた。
 「うっ___」
 しかしただでさえバルバロッサとの戦いで彼女の魔力は限界に近いレベルまで落ち込んでいた。ついには、意識が朦朧として、手もリングさえも輝きが断続的になってくる。
 「すみません___すぐに傷を塞ぎますから___」
 「いんや、おまえは休んでろ。」
 聞き覚えのある声がする。
 「え?」
 「よう。」
 後ろを振り返ると、そこには両手に魔力を満たしたあの老人がいた。
 「アモンさん!」
 「ったく、原住民が怪我ぐらいでピーピー騒ぎやがって!俺がまとめて治してやる!」
 アモンは光に満たされた両手を空に掲げた。
 「ヒールレイン!」
 アモンの手から光が飛び出すと、それはすぐに花火のように弾け飛び、白く光り輝く雨となって集まった人々の身体に降り注いでいった。バドゥルの人々は突然のことに驚き、逃げだそうとしていたが、光の雨が身体に心地よさを運ぶことを知ると簡単に受け入れた。
 「凄い___」
 フローラもそっちのけにしていた自分の傷が塞がっていくことに、ただ感嘆の呟きをこぼすしかなかった。
 「やれやれ、なんか妙な気配があるから来てみればこの様だ。他の奴等はどこだ?」
 アモンは砂でも払うように手を叩きながら尋ねた。
 「みんなあの飛行船の中にいます。私が戻ったら飛び立とうって。」
 「は〜ん。」
 アモンは細長い顎を擦った。
 「ここを襲ったのは魔族か?」
 「そうです。サザビーがバルバロッサとリュキアだと言っていました___」
 「名前はどうでもいい。俺は知らないからな。それで?倒せたのか?」
 フローラは俯いて首を横に振る。
 「とんでもない___とても勝てる相手ではありませんでした。」
 「そうか。」
 それを聞いたアモンがニヤッと笑ったことに、フローラは気が付かなかった。
 



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