第3章 クーザーの怪奇
「しかしあれだなぁ、こうして漁にも出ねえで俺たちゃ何をやってるんだろうな?」
「まったく。」
クーザーの漁港。小型の漁船の中で猟師は暇を持て余していた。漁船は全て浜に上げられ、出航の予定はない。沖合に漁に出た船が立て続けに消息を絶ったのが原因だった。
「このままじゃおまんま食いっぱぐれちまう。」
「かといって今の御上はあてにならん。」
「まったくだ。ボンドの野郎は何を考えてるんだ。永世中立国のクーザーで傭兵なんか集めてよ。」
「やれやれ。浜に魚でも打ち上げられていればいいんだがな。」
「んなむしのいい話が___あるよ。」
「は?」
漁師は舟から身を乗り出して、浜に打ち上げられている塊を指さした。まだ夜明け前だ。薄暗くてはっきりとしないが、漁に飢えた彼には大きな魚に見えた。
「本物か!?あれは!」
「げっ!いや、人だぞあれ!」
猟師たちは慌てて船を飛び出した。
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