第2章 裂海の王 

 「あんたたちの目的地はクーザーだったよね。」
 「ああ。」
 木造のコップに葡萄酒を満たして話が始まる。洞窟の一角に設けられたゼルナスの部屋は海賊であっても家具(盗品)の趣味などに、どこか女っぽさを感じさせる印象だった。
 「それじゃあ約束通り、クーザーに運ぶ変わりにあたしたちの仕事を手伝ってもらうよ。」
 「海賊の仕事を陸でやるのか?」
 サザビーは久しぶりの美酒を口にして思わず笑顔になる。
 「近頃景気が悪くてね。」
 「ねえねえ。」
 サザビーとゼルナスの間で順調に進もうとしていた会話に、ライが割り込んできた。
 「その仕事って何なのさ。」
 「鈍っ!」
 サザビーとゼルナスが口をそろえて叱咤する。
 「そ、そういわないでよ。」
 「おまえ女海賊が陸でする仕事って言ったら、奴隷の調教って相場が決まって___んぎゃ!」
 ゼルナスに思いっきり足を踏みつけられてサザビー悶絶。
 「陸でやる海賊の仕事は山賊と大差ない。つまり盗みさ。」
 「盗み!?」
 ライの生真面目はその手の言葉に敏感。
 「クーザーで何を盗むんだ?それ如何じゃ協力してやるぜ?」
 「これさ。」
 ゼルナスは古びた写真を撮りだした。そこに映っていたのは小さな指輪だった。




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