第11章 閃光のリュキア
「いやしかし、大した盛況ぶりだな。」
ローレンディーニに辿り着いたサザビーと棕櫚は、賑やかな街の装いに呆気にとられていた。街中が飾り付けられ、建物の間にはいくつもの旗が渡されている。街の大通りを行き来するのは旅人や商人がほとんど。勿論旅人と言っても、その多くがちょっと変わっているのは言うまでもない。
なにしろ今は祭りの時期。年に一度のローレンディーニ最大のお祭り、芸術祭のシーズンなのだから。
「地元の人たちはあんまり目立ちませんね。」
「そりゃそうだ、毎年じゃぁな。でも子供たちは大喜びってか?」
「おじさんおじさん!」
子供が近寄ってきて、サザビーの上着の袖を引っ張った。
「おじさん、げーじゅつの人!?」
「ん?ああそうだぜ。でもおじさんはやめような。」
サザビーは子供の頭を荒っぽくなで回した。
「鳳来鳥折って、鳳来鳥!」
「鳳来鳥?」
「ああ、折り紙ですね。ソードルセイドの遊戯ですよ。」
棕櫚は子供から紙を受け取ると、器用な手さばきで折り畳み、あっという間に鳥の形にしてしまう。
「はい。」
「うわーい!ありがとう『お姉さん』!」
子供は棕櫚から紙の鳳来鳥を受け取り、喜んでどこかに走っていってしまった。棕櫚はそのまま固まっていた。
「ははは、まあ気にすんなよ棕櫚。」
「子供は正直ですね___」
さて、この賑やかな街のどこに均整があるのだろう?二人はすでにその目星をつけていた。いや、自ずと分かってしまっただけだが。
「芸術祭で優秀賞を獲得した人は、ローレンディーニが誇る最高の芸術品、『女神の微笑み』を見ることができる。」
それは街中の人が知っていることだった。
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