第6章 魔導師アモン
魔導師アモンがゴルガのローザブルグに住んでいるのには理由がある。ゴルガ国内にはいくつかの大きな都市があり、それらは国家に属するものだが、各都市単位での政治を許されている場所でもある。ゴルガ国の首都ゴルガが落とされた今でも、皆が降り立った港町シィット、山間の街ローザブルグ、西部に位置するジャムニと言った都市は健在だ。ただ、首都はポポトルの手の内にあるわけで、これらの都市でも危機感を募らせている。しかしながらこのローザブルグだけは違う。
「永世中立都市?なにそれ?」
揺れる馬車の中、ライがフュミレイに聞き返した。
「あらゆる有事に関与しない、世界条例によって守られている都市だよ。」
「世界的に見て貴重な文化人とかを、戦争から保護するために築かれた都市だって聞いたことあるわ。」
ソアラの言葉にフュミレイも頷く。
「戦争に巻き込まれないという保証のある場所だな。世界ではローザブルグと法王堂だけだ。」
法王堂はクーザー国のクーザーマウンテン山頂に位置し、世界元首である法王の住む場所だ。
「アモンという男は非常に優れた魔力を持ち、その魔術は百万の兵力に相当すると言われている。彼は自らの力を戦争とは無関係の場所に置くために、ローザブルグにいるのだろう。」
フュミレイの説明に皆は納得して頷いていた。馬車は時折激しく揺れる。
「あぃえええぇっ!」
案の定というか___舌を噛んだのはライだった。
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