第2章 眼鏡と薔薇

 「すまなかったソアラさん、それにライ。私怨を利用されたとはいえ、俺は酷いことをしてしまった。こうなる前に幾らでも食い止めることができたのに俺はそれをしなかったんだ。恨むのは簡単なことだが、もっとソアラさんの気持ちを考えてあげれば、こんな馬鹿なことだってしなかっただろうに。悔やんでも悔やみきれない。あなたは一切抵抗しないことで、気持ちを伝えようとしてくれたのに。あなたには心からお詫びをしたい。それとライ。信頼を裏切ってしまって申し訳ない。親友に対して、最低のことをしてしまったと思っている。また会うことがあるかどうか分からないが、俺は君たちに明るい未来があることを願い続けることにする。本当にすまなかった。ワット・トラザルディ。」
 マイアはくぐもった声で手紙を読み終え、丁寧に折り畳んで封筒に戻した。あれから三日が経った。あの事件に関わったドラル、ワット、その他四人の兵士は、事件当日の内にこの駐屯基地から姿を消した。ワットと四人の兵士は兵隊訓練所で一ヶ月の謹慎。ドラルは内通の余罪が発覚したため除隊され、カーウェンの留置所にぶち込まれた。彼のその後については白竜軍本部に委ねるとのことだ。
 「ワットに会いたかったな___」
 ライは寂しそうに呟いた。
 「会えるわよ。また私たちがここに来ることだってあるわ。」
 まだあまり派手なアクションはできないが、ソアラの回復は著しい。もうこうして平然とマイアの元を訪れることができるくらいだ。
 「そうですな。その時にはもうこのようなこともなくなっているでしょう。あなた方は白竜軍で認められた存在になっている、そう思いますぞ。」
 マイアが意味深げな事を言って微笑んだ。
 「どういうことですか?」
 フローラが尋ねる。
 「カルラーンに向かっていただきたい。」
 「カルラーン!白竜軍の本部ですか!?」
 突然のことにソアラの声も上擦っていた。
 「正式に白竜軍の一員として認めていただくと同時に、あなた方を個人的に受け入れてくれそうな人物もおるのでな。」
 「その人は___」
 そしてマイアは徐にその名を口にした。
 「白竜将軍アレックス・フレイザー。」




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