8  発病   

 淳が自分の日記メモを読んだことによると、
 一昨年(2006年)の5月に激痛と不正出血がありました。
 <「不正出血は身体のSOSだから検査しなきゃダメ!」
  とひろちゃんに言われ、検査することにする> て書いてある、
 と見せてくれました。

 淳は子宮と卵巣を検査したのですが、なんともありませんでした。
 「なんともなかった!」と電話してきました。
 私はその電話を受けた時、何のことか思い出せませんでした。
 淳は「足が腫れた」とか、「胃が痛い」とか、しょっちゅう身体の不調を訴えていたので、
 私はたぶん、いつものように、その場限りのアドバイスをしただけで、
 たいして気に留めていなかったのです。

 たいていは日にち薬で治ります。
 でも今思えば、なんともなかったことをわざわざ電話してきたくらいだから、
 ただならぬ激痛だったのです。そのことに気付くべきでした。

 結果から言うと、当時の淳が煩っていたのは、大腸でした。
 どうして、子宮と卵巣だけでなく、大腸も検査しろ、と言わなかったか?悔やまれます。
 やはり激痛は、見逃してはいけません。ちゃんと原因があるのです。

 「どうして大腸も検査しなかったの?」とあとで問うと、
 「子宮と卵巣の検査があまりに過酷で屈辱的だったから、イヤんなった」と、淳。
 確かに、定期検診で胃のレントゲンを撮るのも、たいへんです。
 ましてや、働き盛りなので、それ以上検査する時間がなかったのでしょう。

 10月には、両親を連れて石垣島に親孝行旅行をしています。
 あとで思うと、行けて良かったのですが、淳のお父さんは
 「のんきに旅行してる場合じゃなかったんだな。」と悔いていました。
 このとき石垣の友人Nに「身体がくの字になるほど痛い時がある」
 と漏らしたそうです。
 Nは、「それはおかしいよ。大腸を診てもらいな。」と強く推したそうですが、
 淳は診てもらいませんでした。

 11月にうちに来た時に「もちろん、いずれ結婚したいさあ」
 といつになく言うので、「そうか、結婚したいのか。」と、
 12月に夫Tが、同僚とお見合いをさせました。
 しかしながら、再度会うことにはなりませんでした。
 淳のほうから断ったそうです。
 ジャニーズのタレントと現実の独身男性とのギャップに、おののいたのでしょう。

 淳が今さら、どうして見合いをしたのでしょうか?
 淳はすでに、予感があったのでしょうか?
 その翌月に死の宣告を受けたのですから。                   

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