6  育ての親   

 淳は私達の子供を、愛情を持って育ててくれました。
 子供達も、その愛情に応えてくれました。
 長女も次女も、生まれる前からうちに出入りしていたおばちゃんが大好きです。

 成長と共に、長女がだんだん淳に似て来て、不思議でした。
 反対に次女は、淳と異種の人間なので、度々淳を怒らせました。
 「ひろちゃん、ほっといちゃだめ!」とよく注意されました。

 でも淳が、次女のその理解不能なところを楽しんでいたのは、言うまでもありません。
 去年「次女はさ、どこにいても人の輪の中心になる子だからさ。」と言うと
 淳は「ひろちゃんといっしょだね。」と言いました。
 え???そんなことないけど、うれしいひと言でした。

 淳の弟も結婚していないので、淳には甥も姪もいません。
 私が淳にプレゼントできたこと、それは、長女と次女の成長です。
 淳に良く似た長女と、私に良く似た次女。
 淳の唯一の子供でした。

 淳「『ななまやは私の子だから』と職場で言ったら、
   『そんなこと、母親の前では絶対言っちゃダメよ。』って言われたの。」
 私「はは、そんなことないよ。だって、淳の子だから。」
 私は本気でそう言いました。
 淳は、子供達のことを愛してくれ、育ててくれました。
 だから、子供達が淳に遊んでもらっても、お礼とか言ったことはありません。
 入学祝いとかで、何か買ってもらっていても、淳の子だから当然、と思っていました。

 でも今回、お葬式に列席できなくて、
 やっぱ淳とは血が繋がってなかったんだ、と思い知りました。
 本当の肉親は、産まれる前から、そして死んだ後も、お先祖様のもとに繋がっているのです。
 淳が死んでしまった今、淳と私達を繋ぐ赤い糸は、どこにもありません。

 やはりうちらは、他人だったのです。                                           

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