22  遺骨   


 初七日が済んでから、
 家族4人で横須賀の淳の実家に押しかけ、淳の遺骨にお線香をあげました。
 桜が満開でした。
 
 淳の遺骨の前に座ると、無条件に涙が出ました。
 夫Tも涙を拭いていました。
 長女も泣いていました。
 次女も泣きました。

 やっぱり淳は、死んだのです。
 淳の身体は、この白い箱だけになってしまったのです。
 私達は、淳が死んだと聞いてから、初めて涙を流しました。
 私達家族に溶け込んでいた淳は、もういません。

 「ちょっとだけ先に行っただけやないか。俺らもすぐに行くんや。」
 夫Tは坊主なので、こういう時はいいことを言います。
 「散る桜、残る桜も散る桜、や。」

 帰りに淳のお母さんから、紅白の水引きに入った「お祝い」を渡されました。
 次女の入学のお祝いだそうです。
 帰って、お祝いの封筒を開けると、5万円入っていました。
 ばかな、どうして5万円も包んでんだよ。

 「メージくらい受かんだろ、ヤマピーでも受かったんだからさ。」と言っていた淳。
 「ガクゲーは大丈夫だって。淳だって受かってたんだからさ。」とはげましていた淳。
 次女の結果を知らないで逝ったくせに、お祝い金か?
 淳のバカ。
 お金を包むんじゃなく、長女の時のように、
 とっておきのうまいもん屋に連れて行って、乾杯して、
 帰りに服でも買ってやってくれよ。

 そのお金を見ると、淳が死んだことがリアルに感じられて、さらに涙がでます。
 このお金で、私がどんなお祝いを買える、というのでしょう?
 淳のバカ。
 お祝いなんて、淳がしなきゃ、意味ないんだよ。

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