20 忠犬ハル公
姉家は、屋内で柴犬を飼っていました。
11年前の春に、姪が市場でねだって、買ってもらった犬です。
犬は飼い主に似る、と言いますが、この子も姉家の家風にぴったりの犬でした。
おっとりしていて、でしゃばらず、主張せず、邪魔せず、粗相せず、
日本犬らしい賢い犬でした。
当時は母屋の義父も足腰がしっかりしていたので、毎日散歩に連れて行き、
子どもも散歩に連れて行き、お手伝いさんも散歩に連れて行き、
と、何度も散歩のつきあいをさせられた犬でした。
近所に住之江公園があり、そこに犬連れで散歩に行くと、
人間様にとっても、楽しいひとときが持てるのです。
「めざましテレビ」の「きょうのわんこ」に出演したこともあります。
姉の家は半分が庭なので、室内犬と言っても、
我が家で飼われるのとは違い、幸せな犬でしょう。
みんなに愛されているハルちゃんですが、
姉がいなくなったことに気付かないわけはありません。
姉のベッドで寝て、毎朝、探すんですよね。姉を。
一部屋ずつ家中を探し、トイレの中まで探すそうです。
そして、姉の死後84日たった、6月21日朝。
ハルは、姉のベッドのところで、
ビニール袋に口をつっこんで死んでいました。
前日は、散歩に行った時に、あっちもこっちもと行きたがり、
いつになく長く、遊んでいたそうです。
やはり姉は寂しかったのでしょう。戻って来て、ハルを連れて行きました。
けれどもやりきれないのは、姪と義兄です。
寂しくなった上、ハルまで失ってしまい、悲しすぎます。
本当に2人きりになってしまいました。
でも、私は安心しました。
空に姉の姿を描く時、姉に寄り添うハルの姿が見えます。
ハルよ、姉のところに行ってくれてありがとう。
いつまでも姉の話し相手になって、そばにいてやっておくれ。
NEXT→