16  忌引き

  
 職場で姉の訃報のメールを見て、すぐに帰る段取りをしました。
 3月30日夜7時からお通夜。31日朝11時からお葬式と決まりました。

 社内規定を引っ張り出して確認すると、
 兄弟は忌引き3日、お見舞い金1万円とありました。
 なら、土日をはさんで、関西に4泊5日できます。
 去年の義父の葬儀の時は、パートだったので、忌引きがなかったうえ、
 お見舞い金もありませんでした。
 正社員になって、初めての特典です。

 お葬式の日に本郷の旅館に泊まる予定がありましたが、
 残念ながらそれはドタキャンです。
 長女は千葉に旅行中で、次女は春期講習中です。
 それぞれ忙しい身ですが、翌日のお通夜には間に合うように来るでしょう。

 昼過ぎに職場から家に戻りましたが、すぐには帰省できませんでした。
 喪服の用意だけでも大仕事です。
 嫁入りに作ってもらった着物の中から、一度も着たことのない喪服を捜し出し、
 しつけをほどき、帯締め、帯揚げ、足袋、襟芯を入れて、
 もう、ベッドの上は収集がつかない状態になってしまいました。

 着物だけだと疲れるので、普通の喪服も入れて、お通夜の夜用の普段着も必要で。
 次女は制服で良いけど、長女の喪服は??
 私のを貸して、重なる時は、入学式に着ていたグレーのスーツでいいか。
 長女の黒靴はどこにある??数珠も要る。黒いパンスト2枚。
 あと、化粧品とコンタクトの洗浄液と。
 新幹線では何着る?関西は暑いの?寒いの??

 もう、頭はパニックです。コンビニに宅急便を出せたのは、4時でした。
 荷物を取りに来てもらうと、来るまで待たないといけないので、
 自力で持ちあげて行ったほうが早いでしょう。
 これが意外に重く、きっちり腰痛になりました。

 やっとこさ荷物を出したあと、荷造りで散らかった部屋の掃除をして、
 しばらく家をあけるために、冷蔵庫とシンクの掃除をして、
 旅館のキャンセルをして、つの日記に報告をして、
 家を出る段取りができたのは、夕方6時をまわっていました。

 話には聞いていましたが、
 いやもうほんと、身内は泣いている暇などありませぬ。

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