1  追悼姉

  
 きちんと姉の最期のことを書こう、と思っていましたが、書けませんでした。
 たぶん、まだ生きていることにしたいのです。
 ぼちぼち頭の中を整理して、事実と向き合って、
 ちゃんと送り出してあげなくては、
 と思うので、ついに、禁断のこの話題に着手します。

 こまで書いただけで、涙があふれてきます。
 でも、奮起して書きます。
 泣きながら書きます。
 そうすれば、自分の中の何かが吹っ切れるでしょう。

 さて、姉の最初のがんの兆候は、2001年12月でした。
 漠然とした死の恐怖が、いきなり私の眼前に迫ってきました。
 初めて死というものを考えました。
 「私たちの命は、永遠の命ではない。」
 ここで自分の人生も終わってしまうかもしれない。
 だとしたら、今すべきことは何なの??

 その時のショックに比べたら、今回は大丈夫です。
 5年かけて、姉だけではなく、自分の命に対する警鐘をも
 おそるおそる聞くことが出来るようになりました。

 寿命が来たら、人は死ぬのです。
 永遠の闇に向かって、ひとり歩いて行かなくてはならないのです。

 そのことを考え続けた、この5年間でした。
 けれどこれからも、加齢とともにますます頻繁に、
 もっともっと身近に感じ続けていかなくてはならないのでしょう。

 20歳までは、懸命に自分を作り、
 40歳までは、懸命に新しいイノチを作りました。
 それに比べると、これからの未知数年は、なんて悲しい年月なんでしょう。
 今、そばにあるイノチを失うことのみならず、
 自分が存在しなくなる恐怖を見つめていかなければなりません。

 今のままでは、ちゃんと向き合っていけるわけはありませんが、
 今回のような現実を突きつけられ、すこしずつ、
 かぎりあるイノチに対して、諦めの境地に達していくのでしょう。

     NEXT→ 

 もどる