第1章 開かれた扉 

 「魔導口ってなんなんだ?」
 フュミレイが作った巨大すり鉢の底に生まれた池。鏡のように均一な輝きを示す水面を見下ろし、サザビーがアモンに尋ねた。
 「アヌビスの封印さ。恐らくあの向こうの世界にアヌビスが住んでいる。」
 「世界?」
 フローラが憂い気に問うた。アモンの口から発せられる言葉の一つ一つが突飛無くて、ただでさえ動揺している今は身に堪える。
 「そうだ、セルセリアには古くから伝わっていることだが、俺も信じてはいなかった。俺たちの住む世界は中庸界といって、天上の世界と、地下の世界の真ん中にあるというのさ。」
 「それの出入り口がアヌビスの封印だっていうのか___?」
 それを必死に守ろうとして、フュミレイは命を絶ったのか?百鬼は身中に蟠るものを感じて拳を握りしめた。
 「いや、穏やかじゃないぜこれは___」
 アモンはしばし池を見つめていたが思い立ったように空を見上げた。
 「もう帰るつもりはなかったが___俺はセルセリアに行く。おまえらはクーザーに行って、法王を捜せ。」
 「法王?クーザーマウンテンの主がですか?」
 棕櫚が首を傾げて問うた。
 「きっといる。ランスに事態を取りまとめさせろ。ああライ、おまえは俺と一緒にセルセリアだ。」
 アモンは強引にライの後ろ襟を掴んだ。
 「ええ?僕ぅ?」
 ライは戸惑っていたが___
 「てめえの故郷だ。別の世界に行く前に一度は帰っておくべきだろ?」
 アモンの言葉に重い何かを感じ、すぐに大きく頷いた。




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