【G】のキャラクター辞典

自分で設定を忘れないためにも、資料まとめます。なるべく詳しく。

ア行(4)カ行(3)サ行(3)タ行(2)ナ行(1)
ハ行(3)マ行(2)ヤ行(1)/ラ行(0)/ワ行(1)/計20人


●アルベルト・ローク 〔第1部〕
 カルラーン本部に所属する白竜軍の兵士。クーザー国の小都市で比較的恵まれた家庭に育ち、小さい頃から武道の鍛錬を受ける。剣の腕で町一番になると、白竜軍に強い憧れを抱き、勘当されながらも白竜軍に志願。着実な努力を積み重ねてアレックス付きの将校となる。同僚のサラとはこの頃に出会い、一目惚れしてたちまち恋仲になった。朗らかで真面目な優等生タイプだが、感情的な面も持ち、物事を捉える視野は決して広くない。戦場でサラと将来を誓い合った直後に彼女を失ったことは悲劇だったが、それを受け入れられずに放浪の旅に出たことは同僚のデイルらの失望を買った。死体が発見されなかったことに縋り付き、サラを探す旅に出た彼は、ついには自分を見失う。辺境の地グレルカイムでサラによく似た女、ラミアと出会い、またライたちとも再会したことで一時の希望を取り戻すが、失った時間への悔恨は大きく、まるで自らの命を絶つようにゴルガンティの攻撃からライたちの盾となって散った。
◎関連人物 サラ(恋愛)、アレックス(支持)、ラミア(影響)
◎語録  ラミアの励ましで生きる希望を取り戻し・・・「今更遅いかも知れないが___生きるために戦おう、ラミア!」・・・サラと結婚したらゴルガで商売をするつもりだったのだが。


●アレックス・フレイザー 〔第1部〕
 白竜軍の将軍であり象徴的存在。一見すると眼鏡姿の優男だが、白竜軍を決起しレサの大戦を勝利に導いた張本人でもある。
 白竜軍はケルベロスの世界侵略に対抗すべく決起した組織だが、彼自身はケルベロスの出身。フレイザー家はケルベロス東部の小都市グスコークの豪族で、セルセリア出身であるアレックスの父は、レサの体制に反目する異端だった。そのため息子に下った徴兵令に反発し、母子共にセルセリアへの逃亡を手引きする。しかしその計画をシャツキフ・リドンに見破られ、父母は処刑。母の手で海原に投げ出されたアレックスだけが奇跡的にセルセリアに流れ着いて一命を取り留めた。ここで彼は後に妻となるニーサと出会い、ケルベロス打倒への思いを新たにする。しかし父の教えと共にケルベロス城で教育の場を得ていたアレックスは、父に比べて多角的な思想の持ち主でもあった。
 大陸に戻ったアレックスはケルベロスの手で不遇を味わった人々をまとめ、セルセリアを拠点にゲリラ活動を行っていた。しかしニーサの妊娠をきっかけに、彼女との結婚を決意し、ゲリラからも身を引く。だが世界侵略の意志を明確にするべく、レサがセルセリアに侵略の手を伸ばしたことで、彼の短い平穏はあっさりと潰えてしまった。仇であるシャツキフ・リドンの温情を受けたアレックスはケルベロスの兵となり、彼の娘であるフュミレイ・リドンの教育係となる。これはシャツキフがアレックスを監視し、飼い殺しにするための計略であった。
 シャツキフが病に伏すとアレックスはケルベロス城へと異動になり、すでに完遂された世界侵略の事後処理を務めることになる。そこで後に四勇者と讃えられるポロ・シルバ、エリック・ホープ、ナターシャ・ミゲルと出会ったこと、さらにニーサと我が子ライデルアベリアが消息を絶ったことが、彼にケルベロス打倒への思いを再燃させた。その後、カルラーン国王ラッセル・ケリー、さらにアモン・ダグを加えて白竜軍を決起し、同時に内乱を起こすことでレサの転覆に成功する。
 この勝利から、白竜軍は調和と防衛の思想で世界に平穏をもたらす存在として支持を集め、カルラーンに本部を置いた。ラッセル・ケリーの死後、アレックスを総帥に推す声もあったが、自身がケルベロス人であることからの反発を知るアレックスは、アイザック・グロースタークを総帥に擁立し、将軍として彼を支えていた。
 ポポトルの大戦でも巧みな戦術で敵襲からカルラーンを守り、ケルベロスとの同盟を成功させるなどその功績は大きかったが、皮肉にも彼がケルベロスを内部から崩したのと同様に、ドノバン・ダビリスの裏切りによって自らの命運を決することとなる。教え子フュミレイの手により暗殺されたアレックスは、静かに歴史の表舞台から姿を消した。しかしその調和の心は、息子のライ、困難の中で彼に生きる希望を見出したソアラ、フローラ、百鬼など、後身に確実に受け継がれている。
◎関連人物 ライ(息子)、ニーサ(妻)、シャツキフ(因縁・敵対)、フュミレイ(好意・因縁)、アモン(盟友)
◎語録 ポポトルに勝つための用意が足りないと指摘されて・・・「こんなに楽しい人生があるのだから、ポポトルに負けてはいけない。未来に希望がなかったら今必死になることなんてできませんよ。」
 アレックスの生い立ちに感服するソアラに対し・・・「たった一人が世界を動かし、変えるのではないんです。たくさんの人の思いが、一人一人の思いが重なって、はじめて世界は動くんですよ。そして、同じ思いを抱く人々というのは、図らずともどこかで影響しあうのです。」
 銃口を向けるフュミレイに・・・「私のために泣いてくれてありがとう。もう遅いかも知れませんけど___あなたの心は痛いほど分かりました。」・・・素で優等生なのは波乱の人生という素地があるからか。




●エイブリアノス 〔第1部〕
 超龍神に仕えるモンスターで、ミロルグの配下。筋骨隆々とした体は人の身の丈の倍近くあり、青い皮膚と黄色い目玉はモンスターらしい毒々しさを放つ。二本足で立ち、皮鎧を身に纏うが、尻からは太い尾をはやし、顔はウシとサイの合いの子のような雰囲気。頭から伸びる二本の角と、大振りの段平がトレードマークである。見た目のおぞましさとは裏腹に、性格は妙に陽気で、話し方に締まりがない。力強さは間違いなく一級品なのに、ミロルグの配下だというのが疑わしいほど間抜けで詰めが甘く、リングの回収役としてたびたび皆の前に立ちはだかってきた割りに、戦闘では目立った成果を上げられなかった。しかし人情味溢れる性格など、一介の悪の手先では終わらない存在感の持ち主で、ミロルグの彼への評価は高かった。
 感性が近いらしいライとは、いつの間にやらライバル関係になり、エイブリアノス自身も次第に任務云々よりも彼との戦いを望むようになる。ソードルセイドの雪山で一騎打ちを挑み、結果としてライの一刀はエイブリアノスを打ち伏すのだが、あまりに激しい戦いは壮絶な雪崩をも引き起こした。そのとき、エイブリアノスは自らの体を盾にしてライを抱き、彼を雪の猛威から守ってみせた。棕櫚の手で助けられたライはライバルの死を聞いて涙を流す。戦いの中で二人の間には確かな友情が生まれていた。ライにとってエイブリアノスこそ、最も愛すべき好敵手であったのは間違いない。
◎関連人物 ライ(好敵手)、ミロルグ(上司)
◎語録 ライに名前を間違えられて・・・「ノーゥッ!俺の名前はエイブリアノスぅ!エイエイブリブリエイブリアノスだぁ!名前くらい覚えろぅ!」
 雪崩に背を向けてライを抱き・・・「勝者は生きてこそ勝者ぁ___いやいや、俺の台詞じゃねえなぁ。」・・・喜怒哀楽、全て秘めたライバルです。


●エスペランザ 〔第2部〕
 ヘル・ジャッカルの広報を自称するモンスター。白いフワフワした毛で覆われた人型の体に、間の抜けた猫のような顔を持つ。戦闘能力は皆無に等しいが、モンスターとしては風貌も性格も愛嬌のあるタイプで、ある意味貴重な人材。そのキャラクターを見込まれ、アヌビスからヘル・ジャッカル内でのソアラの監視を命ぜられる。ところがソアラには早々に監視役であることを見透かされ、挙げ句の果てには気の合う友人関係になっていた。八柱神候補の選抜会こと戦劇では、司会進行と実況を勤めており、それが広報たる所以。ソアラと親しくなりすぎたことが災いしたか、彼女の逃亡を手助けしてジャルコにより殺害された。
◎関連人物 ソアラ(好意)、フェルナンドとアイルツ(同調)、バトゥパ(名コンビ)
◎語録 ヘル・ジャッカルからの脱出を決意するソアラに・・・「僕は確かにアヌビス様の命令で君を見張っている。でも、僕だって命令より大事なものを知っているつもりさ。」





●ギャロップ・グレイドーン  〔第1部〕
 ポポトルの総帥、デュレン・ブロンズの補佐官にして実質の首領。いわば軍事国家ポポトル建国の仕掛け人であり、極めて強い野心の持ち主である。ポポトルの公式発表では彼の出自はケルベロスの貴族階級とされているが、ケルベロスにはそれを証明する記録等はない。事実彼はゴルガの一商家の出であり、決して身分の高い人物ではなかった。国家の支配者たる帝王学ともいうべき教育も受けてはおらず、商人の世界における骨肉の争いのなかで、いかにして敵を欺き、自らがのし上がるかだけを身に叩き込んできた男である。
 未開の地であったポポトルの開拓に乗り出したのは、一攫千金を夢見たゴルガの豪商たちであり、ギャロップもその一人であった。ポポトルには貴重な鉱物資源が豊富に埋蔵されており、豪商たちの挑戦は大成功に終わる。しかし野心的な彼らはそれを公表はせず、作業に携わった現地人や労働者も、信頼に足る者あるいは逃亡や口外のおそれのない者以外は全て抹殺し、鉱物はあくまで本土で得たものとして何食わぬ顔で商売を進め、巨万の富を築いた。そしてその資金を元手に、彼らはポポトルに自治領を作りはじめたのである。
 無論そこに至るまでは豪商たちの間でも数々の諍いがあったと思われる。最終的にその頂点に立ったギャロップだが、彼は並み居る豪商たちの中では三下でしかなかった。すなわち彼がその地位に至るには、全ての豪商を亡き者にする必要があったと思われる。おそらく彼は、全てのお膳立てが済むまで最有力な豪商の側で泥水を飲むがごとく耐え続け、最後の最後でその野心を結実させたのだろう。
 野心は野望へと変わり、ギャロップは軍事国家ポポトルによる世界支配へと目を向ける。折しもレサの大戦の中、最後の楽園とでもいうべき触れ込みで、世界紛争を避けた有力者や移民を集め、また有能な参謀(四将軍)を得て、野望は実現へと進んでいくのである。
 だが彼をこれほどまで駆り立てたのは、他でもない超龍神の存在があったからだろう。おそらく彼は、開拓時代に何らかの形で超龍神が封じられていた水晶を発見した。そして超龍神、あるいはその当時から側にいたであろうミロルグやカーツウェルによって、野望の果てへのベクトルを与えられたと思われる。彼と超龍神の出会いを単なる偶然と見るかは難しいところだが、ギャロップが超龍神の邪悪な神託に応えうる、悪辣な性根の持ち主であったことは確かであろう。
 正式に軍事国家ポポトルが建国されてからも、彼はこれまでと同じく利己的に動いた。自分にとって不利益な人物と見れば、容赦なく抹殺する残虐な男であった。だがそれは彼自身の弱さ故でもある。自らの弱い立場を隠れ蓑に、他人に取り入ってここまでのし上がってきた彼にとって、出る杭ほど目障りなもの、自らに危機を抱かせるものはなかった。自身にカリスマ性がないことを知っているからこそ、彼は英雄的な存在を極端に嫌った。そしてポポトルの末期、彼にとって最も忌むべき存在となったのがソアラ・バイオレットであった。美しい女性であり、明らかな特異性を持ち、同情されるべき出自であり、驚くほど強く才気に溢れ、決して謙虚とは言えない気性と正義感の持ち主。彼にとってこれほど憎らしい存在はなかった。そしてソアラもまた、一将校にあからさまな加虐趣味を向ける国家の重鎮に、最大級の嫌悪と軽蔑の眼差しを送っていたものと思われる。
 ギャロップはポポトルの大戦の最終決戦となった本島での戦いで、シークに尻を叩かれてやむなく戦車で出撃。ベルグランの爆撃にあって戦死した。
◎関連人物 超龍神(従属)、サザビー(利用)、ソアラ(虐待)
◎語録 金獅子作戦で、劣勢になっても戦場に向かおうとしないシークとガルシェルに・・・「おまえたちが戦場に行けば変わるはずだ!」・・・結局は超龍神にも将軍たちにもうまく利用されていただけでした。

●クルグ・ノウ 〔第1部〕
 十五歳にしてケルベロス軍に志願し、白竜との軍事協力交渉のためにのエンドイロに駐在した使節団の一員。その後、ポポトルの重装兵部隊がエンドイロを襲撃したことで初陣を飾る、といってもその時は何も出来ないまま後方でまごついていただけだった。この戦闘後、指揮官フュミレイへの伝令に向かったところ、負傷の治療のために柔肌を晒した彼女と遭遇。初々しさと誠実さで好感を持たれ、手当を手伝うことになった。この出会いが後の彼の人生を大きく左右することとなる。
 二度目の出陣、エンドイロを制圧した重装兵部隊を殲滅する戦いで、クルグは左足に銃弾を受ける。本国に戻るまで満足な治療も受けられず、患部を悪化させ、やむなく左足の膝から下を切断。ケルベロス軍からは除隊となり、弱冠十五才にして人生のどん底を経験する。しかしエンドイロ戦線の同士の多くは、その後のポポトル本島の戦いで帰らぬ人となっており、結果としてこの負傷が彼の命を救うこととなった。
 天より与えられた命。前向きな彼は体力を取り戻すと共に、未来への希望を見いだし、ケルベロス本国で新たなる人生を模索する。そして辿り着いたのが法律家への道だった。もともと文化系で、正義感だけは人一倍強い彼のこと、少々人情家でお人好しすぎる面はあったが弁護士が自分の天職だと信じて猛勉強に励んだ。その努力が実り、彼は弁護士としてフュミレイと再会を果たすことになる。
 反逆罪とアレックス殺害の罪に問われたフュミレイの弁護人に、クルグが抜擢された。ケルベロスでは弁護士の資格を得るための国家試験があるが、新米の彼がフュミレイの弁護人に抜擢されたのは、試験の点数が最下位だったためと言われている。
 彼は絶望していたフュミレイの希望となり、また様々な妨害を受けながら彼女のために誠心誠意尽くした。その結果が、フュミレイの罪の大幅減免と、陰謀の主導者であったハウンゼン・グロースとザイル・クーパーの逮捕である。世紀の大逆転劇、この活躍でクルグの名は一躍国中に知れ渡ったが、新米の大活躍、しかも政府の一派閥に重大なダメージを与えたことで恨みを買い、その後の弁護士生活は過酷を極めた。ましてフュミレイがアドルフ・レサ失踪の最有力容疑者とされてからは、彼の身辺は一層穏やかでなくなり、首都ケルベロスからの脱出を余儀なくされる。
 だがクルグは何があってもくじけない心の持ち主であり、その頃には持ち前の誠実さで信頼関係を築いた者も増えていた。望まずとも周囲は進んで彼を助ける。彼はローレンディーニに移り住み、やがてその若さにして都市政に携わる任を与えられたのである。
◎関連人物 フュミレイ(憧れ)、ジェラード(仲間)
◎語録 フュミレイの肌に触れないよう包帯を巻こうとしているのを咎められ・・・「も、申し訳御座いません!そ、その、神々しくって___」
 アレックスへの悔恨の念を吐露するフュミレイに・・・「フュミレイさん。それは僕には必要のない事柄です。あなたの胸の内に留めておくべきです。」・・・純朴かつ誠実。足を失って一回りも二回りも強くなりました。

●グルー  〔第2部〕
 アヌビス八柱神でも特に異彩を放つ存在。屈強な面々が揃う中にあって、女性のように細身で色白、切れ長な目や形良く大きな口、滑るような黒髪など、実に艶やかな男である。美しいもの、とくに美しい女性を好む彼はヴァンパイアと呼ばれる一族である。容姿は魔族と変わらないが、蝙蝠に化けたり、光のない環境であれば限りなく不死であったりといった特徴を持つ。ヴァンパイアと言えば吸血だが、彼の場合吸血は攻撃手段の一つであり、血を吸わなければ命が尽きるといったことはない。さらに、これは何らかの術ということではなく彼の一族の特性なのだが、女性を本能から恐怖させる、あるいは魅了する力を持っている。見た目には到底強そうに見えないグルーに対して、ソアラが初対面から深い恐怖を抱いたのもそのためだ。
 一見怠惰に思えるグルーだが、八柱神の中ではなかなかの働き者だったようで、偵察からソアラの誘拐、聖杯の奪取に至るまで幅広く任務をこなしている。ただその多くは女性が絡んだものであり、決して仕事熱心というわけではなく、自らの好奇心や欲求を満たすためと見るべきだろう。実際にソアラ抜きの一行を偵察したときなどは愚痴を零してもいた。このほか死や闇にまつわるモンスターの扱いに長けることも、アヌビスに重用された理由の一つといえるだろう。
 戦闘では真っ向勝負などもってのほか。肉弾戦は得意ではないし、呪文もそれほど高度なものは使わない。自らの特性と策略で戦うことがほとんどである。ただ、闇の中であれば胸を貫かれても息絶えることがないため(さすがに全身を粉々にでもされれば生きてはいられないだろうが)肉弾戦にも対応はできるし、それを誘い水として罠を張ることならば多々あるだろう。この他、吸血により人、とくに女性であれば一切の抵抗を許さずに操ることができるため、できるだけ人が多い街のような場所でこそ彼の強さは発揮される。
 唯一の弱点は光。光を浴びても死にはしないが、グルー自身の力や特性は大きく弱まり、闇の中で見せた耐久力も皆無になる。そのためレミウィスらが地界に再び光を呼び戻そうとした際には、様々な妨害を試みた。
 ソアラを二度に渡って手玉に取るなど最後まで策士であり続けたグルーだが、最期は計略を看破されて光の中で深手を負い、灰と消えてしまった。もっともこの戦いで生き延びていたとしても、光の復活した世界では彼のその後の活躍は見込めなかっただろう。なお、策士同士だからか女好きだからか(趣向は全く異なるが)、ジャルコとは気が合っていたようである。 
◎関連人物 ソアラ(魅惑)、レミウィス(魅惑)、フローラ(魅惑)、アヌビス(好意)
◎語録 ソアラにあえて胸を貫かせ、血の支配の坩堝に落としつつ・・・「感じますよソアラ___あなたの恐怖、あなたの鼓動、あなたの吐息___あなたの全てが私の体内に響き渡る。なんという快楽でしょう___」
 追いつめられたレミウィスとナババを前に・・・「私に殺されることを感謝してください。私はいたぶって殺すのが好きなんです、少しは長く生きられますよ___」
 栄光の城のからくりにて、ナババの命がけの時間稼ぎに困惑するレミウィスに・・・「やってみたらどうです?レミウィス。そのからくりに恋人の命を賭けてご覧なさい。」・・・凄くS、そして凄くエロ。ジャルコほどストレートじゃないけどね。



●サラ・スターマイア 〔第1部〕
 白竜軍の兵士で所属はカルラーン本部。面倒見が良く芯の強いお姉さんタイプで、ソアラたちが白竜で最も慕っていた人物の一人。ショートカットの溌剌とした美女で、ソアラたちがやってくる前のカルラーンではアイドル的存在。志願兵であるが、レサの大戦で家族を失った難民だという噂も。鷹揚な正確で頭の回転が速く、アレックスの良き理解者であり話し相手。彼の秘書的な役回りもこなすなど、器用な面も持ち合わせている。同僚のアルベルトとは包み隠さない恋仲でもあった。銃撃戦、ゲリラ戦法を得意とし、ポポトルの大戦でも果敢に前線に立って活躍。その最中にアルベルトと婚約の誓いを立てるが、彼の目の前でベルグランの空爆を受け、悲劇的な最期を遂げた。ソアラにとっても、サラはラドウィンとの一件で自分を成長させてくれた人物であり、大きな存在だった。
◎関連人物 アルベルト(恋愛)、アレックス(支持)、ソアラ(期待)
◎語録 裏切られ続けてもかつての恋人ラドウィンを信じていたソアラを抱きしめ・・・「あなたって子は___!」
 百鬼を連れて買い物に出るソアラをつかまえて・・・「相変わらず仲良しね。たまの休暇にそうやってデートできるのは羨ましいわ。」・・・カルラーンのアイドルと言うよりは、肝っ玉母さんかもしれない。


●ジャルコ 〔第2部〕
 アヌビス八柱神の一人で、最も残忍かつ悪逆非道を地で行く男。八柱神の面々は大概が冥府を故郷にしており、彼も例外ではない。眼光鋭く、黒い髪は天に向き、口元には嘲笑を繰り返したことで深い笑いじわが刻まれている。背丈が小さく、それに多少のコンプレックスを臭わせるが、実のところは相手に暴虐を振るう口実にすぎない。そもそも彼にコンプレックスがあるとすれば、それは肉体そのものへの憧れである。なぜなら、ジャルコの正体は実体を持たない蒸気のような怨念の塊、「不死体(ふしたい)」だからだ。
 不死体は人の骸に宿り、己の力の媒体として意のままに操る。つまり好戦的な小男のジャルコも、実際はヤドカリの巣でしかないのである。しかしその不死体ごときが、最高級の呪文を難なく操り、鬼神のごとき剣術を使い、八柱神の座を射止めた。おそらくジャルコは冥府にいた当時から、同族にも忌み嫌われるほどの強烈な存在感を放っていたものと思われる。
 ジャルコはソアラが最も苦しめられ、怒り、恐れた敵でもある。アヌビスの誘いに乗ってヘル・ジャッカルにやってきたソアラに、初対面のジャルコは、彼女の腕をへし折ってまで興味本位の陵辱を試みる。悪意はライディアの手で食い止められたが、ジャルコの動機、嘲りの言葉、容赦ない腕の痛み、その全てがあまり衝撃的で、ソアラは以来彼を酷く恐怖するようになった。さらにソアラがヘル・ジャッカルから脱出する際には、荷担したモンスターたちの生首を手に現れ、恐怖に震える彼女に致命傷を負わせた。結果としてソアラは命を繋いだが、小さなジャルコは彼女の前に立ちはだかる大きな壁となった。その後もライディアとの一件、竜の使いとしての自信をうち砕かれる敗北、ソアラはジャルコを前にすると冷静さを失い、苦しめられ続けた。しかしそれは結果として彼女の大きな成長を招く。ヘル・ジャッカルでの戦いでは、逆にジャルコの冷静さを奪い取り、ソアラが勝利を収めたのである。
 アヌビスは自らをより高めるために、ソアラが己を脅かす存在になることを望んでいた。力と力の激突がより高いステージに進むことで、彼の野望もまた現実へ近づくと考えていた。その意味では、誰よりもソアラの成長を促したジャルコは、アヌビスにとって非常に有益な駒だったといえるのかもしれない。
◎関連人物 ソアラ(欲望)、ライディア(欲望)、アヌビス(敬意)、グルー(好感)
◎語録 ソアラの腕をへし折り、強引に組み伏して・・・「いや、竜の使いとやってみたかったんだ。しっかり楽しませろよ。」
 聖杯の奪取に成功したライディアの命を奪い、にやけながら・・・「ご苦労さん。」
 ソアラに自分の戦法を見透かされて・・・「いちいち癇に障る女だ!」・・・力押しに見えて心理戦の使い手。だからこそそれを見破られると脆い面もある。


●水虎(すいこ) 〔第3部〕
 偉大なる妖魔であり、黄泉の統一を果たした覇王。幾多の勢力が乱立する黄泉を、天賦の才と類い希な統率力でその手に束ねた唯一の存在である。だが、天下を統べるに至るまでの道程は決して平坦ではなく、何より彼をその道に突き動かした出来事は愛する人との別れであった。
 水虎は黄泉の辺境の集落、鋼城の主であり、彼の一族は代々この辺りで一つの勢力を保持していた。しかし所詮は田舎豪族であり、水虎自身も黄泉の統一などに興味を示すような野心家ではなかった。ただ自分たちの平和が崩されることも極端に嫌い、彼の鉄壁の能力も相まって、鋼城は戦乱の世にあってどこにも属することもなく、孤高の存在であり続けていた。
 両親の不幸もあり、水虎は若くしてこの集落の主となったのだが、代替わりにも鋼城の足並みは乱れなかった。それには集落自体の結束の強さと、先代から長く仕えてきた古参の家臣の存在が大きい。実際に水虎は野心こそないが好奇心は旺盛で、内政そっちのけで漫遊の旅に出たりする放蕩者なのだが、それでも鋼城という勢力が破綻を来さなかったのは、周囲の人材に恵まれていたと言うほかない。
 水虎のわがままが許されたのは、彼自身が一応のけじめを付けて振る舞える人物だったことはもちろん、なによりその能力で鋼城を守っていたことが大きい。水虎の能力は陣。三つ以上の点を結んだ空間に陣を形成し、そこに自在な制約を掛けるというもの。ただそれは敵の体に直接異常をもたらすというものでもなく、空間の条件を変えるということである。またその効果の発動にも、陣に進入してきた者だけに制約を課す、または陣の中にいる全員に効果があるといった二種類がある。鋼城に張られた陣には、「許されざる侵入者は体の浮上を止めることができない」といった制約が掛けられており、黄泉の空には全てを引き裂く闇がある。足を踏み入れた瞬間、体の自由が利かなくなって闇に葬り去られる陣。これが鋼城を孤高の存在にした。周りの騒々しさをよそに、水虎自身は誰にも束縛されることのない生活を送る。しかし実際は、何とかして水虎を味方に引き入れよう、あるいは始末しようと目論む巨大勢力が後を絶たず、のらりくらりと振る舞いながら彼自身もかなり多くの苦境を乗り越えてきたのは間違いない。
 そして水虎は運命的な出会いをする。生涯の伴侶となる寧々(ネメシス・ヴァン・ラウティ)との出会いは唐突で、彼女が異世界の住人であったことを思えば、この出会いをもたらした偶然は運命と呼ぶしかないほど衝撃的であった。旅を経て互いの理解を深めた二人は、鋼城に戻る前に早々と結婚の誓いを立てた。一層騒がしくなる周辺の勢力をよそに、水虎は幸せの極致に達していた。
 しかし、当時の最大勢力であった善行という妖魔の知略により、鋼城は危機に瀕する。地震による建物の倒壊で敵を討つ。この攻撃で、鋼城の象徴ともいえる天守が崩落し、古参の家臣の多くが命を絶った。これは水虎にとって大きな転機だった。ここぞとばかりに救いの手を差し伸べてきたのは対抗する勢力の杠(ゆずりは)。鋼城の安全を確保するために、水虎は彼の救いを受け入れ、傘下へと入った。その後、水虎は鋼城を離れて前線に立つことが多くなる。それでも寧々との愛に代わりはなく、彼女が子を授かったことで二人の絆はより頑ななものとなった。産まれたのは女の子で紫龍と名付けられた。
 ところが事態は急変する。杠のために役目を果たしてきた水虎だったが、杠にとっても水虎の能力が驚異であることにはかわりない。また自意識の高い杠は、水虎が持ち前のカリスマ性で人望を集めていることに苛立ち、また彼が心から忠誠を誓っていないことを嫌悪していた。杠の能力は他人の能力を歪めること。彼は鋼城の陣の発動条件を、進入者に対するものではなく、陣の内側にいるもの全てに変えることで、滅びへのスイッチを入れた。が、このとき水虎が外出していたのは杠にとって誤算だった。
 水虎が帰ったときはすでに遅し。地下にいて難を逃れた者以外、鋼城の人々は全て闇に飲まれて散った。それは寧々も、紫龍もである。実際、紫龍は寧々の命を賭した奮闘により異世界で命を繋ぎ、ソアラ・バイオレットとしてアヌビスに挑むことになるが、水虎にはそんなこと知る由もない。全てを失った水虎は怒りに震え、杠を葬り去る。そして黄泉から非道な殺戮劇を無くすべく、黄泉統一へと立った。紆余曲折を経て、煉、餓門、天破などの同志を得た彼は黄泉の統一を果たす。平定のもと玉座に着いた水虎だったが、その時彼の胸に去来したのは、自分もまた殺戮の果てにここにいるという事実への虚しさだった。
 その後、彼は悪戯に黄泉を混乱させようと考えたアヌビスによって葬り去られる。その最後は実にあっけなかったが、例え時を止められようと、彼は自分を守るための陣を張っていれば絶命せずに済んだはずである。それをしていなかったのは、心のどこかで自分に裁きの鉄槌が下る瞬間を待っていたからなのかも知れない。
 その後、アヌビスを追って、また自らのルーツを求めて、ソアラが黄泉にやってくる。結局水虎は愛娘との再会を果たせなかった。しかし鋼城に込められた思いは、しっかりと娘に伝わっている。彼の前髪と同じ色の髪を持つ娘に。
◎関連人物 寧々(妻)、ソアラ(娘)、杠(仇敵)、煉(同志)、餓門(配下)・天破(配下)
◎語録 寧々の本名、ネメシス・ヴァン・ラウティを覚えられずに・・・「あーっ、もうわからねえ!長すぎだよおまえの名前。寧々な、寧々。俺は寧々って呼ぶぞ。」
 旅の途中、自分も体調を崩しながら寧々のことを気遣って・・・「おぶるからな。俺の言うことは聞いておけ。」
 寧々の死を知り、杠を前にして・・・「俺の左腕から誓いの刻印が消えた!貴様にはこの意味が分かるか!?」・・・豪快で強引でちょっと理不尽だけど自分に正直な熱血漢。そんな人です。








●頭知坊(とうちぼう) 〔第3部〕
 アヌビス新八柱神の一人となった妖魔で、丸顔、禿頭の巨漢。腰巻き一枚の姿でいることが多く、女受けする容姿ではない。それなりの年齢の妖魔であるが、生来の殺し屋稼業で物事の分別に欠け、欲望に正直。蜘蛛の化身の一族で、四本の腕を持つ。蜘蛛は本来八本足だが、彼の腕のうち二本が細く小さくなっていることから、遠い先祖は六本腕だったのが年月を経て退化が進んだと思われる。
 蜘蛛糸を使った様々な罠、攻撃、防御はどれも強力で、さらに糸無しでも無双の怪力の持ち主。強盗、略奪を生業として生きていたところをアヌビスにスカウトされ、新八柱神の一員となる。団体行動が苦手なこともあって満足な活躍はできなかったが、中庸界に落ちてからザキエルと一騒ぎ起こし、アレックスJrをダ・ギュールに近づける要因となった。フローラに好意を持っており、最期の力で彼女を助ける優しさも垣間見せたが、それも正直者ならではか。
◎特技 蜘蛛の巣を張って敵を捕らえ、手にした斧で一撃!
◎関連人物 ザキエル(共闘・反発)、フローラ(好意)
◎語録 苛ついているところを人質のはずのフローラになだめられて・・・「おまえは優しいなぁ。」・・・実に単純な人である。


●ドルゲルド・メドッソ 〔第1部〕
 ポポトル大戦時代に最もソアラを苦しめたであろう人物。ポポトル四将軍の一人で、悪魔の軍団とでも言うべき重装兵部隊の長。重兵将軍。全身を包んだ鋼鉄の鎧は剣はおろか弾丸にも耐え、またそれを纏う兵たちも人並みはずれた体躯と筋力の持ち主である。それを束ねるドルゲルドもまた長身、筋肉質で、彫りの深い顔で眉を剃り落としており、見るからに厳つい男である。ただ自身の装備はそれほど重装でもない。
 ドルゲルド率いる重装兵部隊の強さは、一切容赦なく、妥協を許さず勝利を追求する姿勢にある。そうといえば聞こえが良いが、剣での戦いの時代に彼はいかな罠であれ毒であれ、あるいは部下を売ることになろうとも、どんな手段を用いてでもとにかく自らの勝利と栄誉と殺戮にこだわる傍若無人な男であった。しかし彼の鍛えた重装兵部隊の実力は確かに本物で、ソアラたちを圧倒したこともあったが、呪文の使い手であるフュミレイは苦手だった。
 ドルゲルドはゴルガ西方の砂漠地帯の出身であり、屈強な体や顔立ち、浅黒い肌には人種の特徴が現れている。レサの大戦時には傭兵として地方戦線に参加し、八面六臂の活躍を見せたという。ただ彼の行くところ敵味方問わず死体しか残らないことから恐れられ、恨みを買い、気付いたときには賞金首になっていた。不利と見れば簡単に退くのもこの男の特徴であり、移民に門戸を開いていたポポトルに逃亡する。そして持ち前の悪辣な気性からかギャロップの目にとまり、その実力を買われて幹部となったのである。
 最期はエンドイロ戦線においてフュミレイとの銃撃戦に敗れて散った。結果としてこの重装兵部隊の敗北こそが、ポポトルの衰退を招き、白竜を勢いづかせた。
◎関連人物 ソアラ(獲物)、フローラ(獲物)、フュミレイ(獲物)
◎語録 ソアラを羽交い締めにした部下に剛剣を振り上げ・・・「しっかりつかまえてろ!おまえは二階級特進だ!」
 エンドイロ戦線でフュミレイと対峙し・・・「生きていたのか、ケルベロスの雌狐!」・・・傍若無人な振る舞いで目立ったわりに、四将軍最初の欠員でもあります。




●寧々(ねね)(ネメシス・ヴァン・ラウティ)〔第3部〕
 水虎の妻で、ソアラの母。本名はネメシス・ヴァン・ラウティ。竜の使いの系譜を辿る一人。力強さには欠けるが、生まれつき眼力で風を巻き起こす能力を持っている。好戦的なタイプの多い竜の使いとしては珍しく、何事にも穏便な解決を好むが、時に周囲を驚かすような大胆な行動を取ることもある。
 竜の使いの系譜は、ジェイローグとレイノラの子セティから始まる。セティが生まれたのは世界がGの脅威に晒されていた時代であり、その戦いを経て数千年に渡り紡がれてきたことになる。その長い歴史の中で、血は徐々に薄められ、一部の系譜は一介の天族へと紛れて消えた。またジェイローグとレイノラの別れの切っ掛けにもなった天族同士の闘争で、翼を持たない天族ことヴィニアが滅亡したことにより、多くの系譜が絶たれたとも言われている。この闘争では高名な竜の使いの一人であるユーリスが命を落としており、彼女に子がなかったことも竜の使いの系譜を大きく衰退させた。
 竜の使いの婚姻について、ジェイローグは特別な約束事を設けなかった。結果として、一介の天族と結ばれ続けた竜の使いの血は、時が経つほどに薄められ、竜の使いたる表現形(女、黄金の頭髪、空色の眼、人によっては若干の牙)を発揮する個体の数は著しく減少していった。しかし子に竜の使いの特徴が見られなくとも、その遺伝子は受け継がれているはず。つまり天族には僅かなりとも竜の使いの遺伝子を受け継ぐものがいる(天族の中でもずば抜けた戦闘力を発揮する人物、例えばミキャックなどはその血を受け継いでいる可能性が高い)。ジェイローグは竜の使いについて分かる限りの記録を残しており、誰がどんな男性と結ばれたかを紐解けば、例え天族に紛れてもその血を内包する人物を探ることが出来たはず。しかし彼はそれをしなかった。恋愛に寛容なのは、ジェイローグ自身が疎まれる恋を成就させた過去を持つからなのかもしれない。
 セティの時代から数千年を経て、天界における最後の竜の使いとなったのがネメシスだ。彼女は竜の使いの特徴こそ持ち合わせていたが、戦いには疎く、呪文でさえそれほど得意ではなかった。戦闘能力だけをみれば、それこそ天族の強者にも劣るほど、史上最も脆弱な竜の使いであった。黄金の髪と空色の瞳を持ち、また血統的にも正当な系譜の持ち主で、光の輝きに身を包むこともできるが、それでもさほど強くない。典型的な正義の味方として神格化されてきた歴代の竜の使いとは比べ者にならない弱さ、それは一つの血筋の末代を象徴するかのようだった。
 このときアヌビスはすでに地界に居を構え、勇敢なる竜の使いリツィラスが封じた血の器を遠くに眺めつつ、次の竜の使いが現れるのを舞っていた。結果として、弱かったが故にネメシスはアヌビスとの接点を持たなかった。それは幸運であったし、もしアヌビスに挑むようなことがあればあっという間に捉えられ、ここで竜の使いの系譜は完全に絶たれていただろう。
 弱いが故に何も出来ない。でも竜の使い。自然と彼女は同情や疎みといった声を耳にするようになり、やがて自分の存在に疑問を抱くようになる。竜の使いの歴史を知りたいと思い、また心のどこかでは過去にも自分のように役立たずな竜の使いがいなかったのだろうかと感じていた。そこには心の隙があった。一方、黄泉で陰鬱なる暮らしを強いられていたレイノラ(黒麒麟)は、異界の様子を知る秘術を作り上げることに成功していた。レイノラはジェイローグの様子を探る方法を考えながら、逆に感じ取られることを恐れてもいた。そこで彼女はネメシスに目を付ける。ネメシスが竜の使いの歴史を探っていることを知り、レイノラは彼女に強い思念を送ることで、夢の中で己が信じる歴史を吹き込むことに成功する。それはジェイローグの陰謀によりヴィニアが葬り去られたという忌まわしき歴史。ショックを受けたネメシスは、頼れる者全てを失ったような錯覚に襲われ、自分の価値をも見失う。戦慄の歴史を胸に抱き続けることはとてもできない、しかしジェイローグの名誉を傷つけることもしたくはない、悩みに悩み、彼女はドラゴンズヘブンの竜の尾より身を投げた。ジェイローグはこの悲劇を察知できなかった己を呪い、竜の使いの記録に嘆きを綴ったという。
 しかし、ネメシスは生きていた。彼女はそれを知らなかったが、ドラゴンズヘブンの尾の下には、かつてレイノラが黄泉へ旅立つために開けた異界への穴が開いていた。死ぬつもりだったのに、なぜか自分は見たことのない世界で生きていた。そこは暗く、強い雨が降り続く世界。命ある自分が明らかに天界とは違う場所にいる。そこでは竜の使いという言葉など何の意味も持たない。そう思うと彼女は、たちまち生きることに希望を見出すようになる。
 しかし黄泉は過酷な世界。夜が明けるのを待ち続ける間に彼女は酷い熱病に冒されてしまう。窮地を救ったのは、旅の途中の水虎だった。彼は行き倒れのネメシスを見捨てることができず、介抱する。彼としては彼女が回復したらそれまでのつもりだったが、寧々は彼の優しさに触れたことで、彼の元で生きたいと願うようになっていた。一度は拒否した水虎だったがやはり捨て置けず、彼女の動向を許した。
 すると今度は水虎が熱病を移され、またその最中に敵の襲撃で毒を受けてしまう。責任を感じた寧々は精一杯の手を尽くし、彼の治療に努めた。これにより二人に離れがたい絆が生まれる。旅の道すがらお互いのことを深く知り合い、そして互いの存在に安らぎを見出した二人の距離は急速に狭まった。やがて寧々と名前を変えたネメシスは、水虎の求婚に答え、彼の妻となった。
 時を経て、二人の間に生まれたのは、父水虎の前髪と同じ紫色の髪の娘であった。しかし戦乱の時代に平穏は長く続かなかった。敵襲を受け、危機に瀕した寧々はせめて娘の紫龍だけでも生かすことを考える。彼女が願いを込めたのはジェイローグ。黄泉の闇の中に差し込んだ光にジェイローグの姿を見たネメシスは、自らの命を賭して、竜の使いとしての力強さを示して、紫龍を光に導いた。その時彼女は紫龍にシェリルという新たな名を与えた。そしてシェリルは命を紡ぎ、ソアラ・バイオレットの名で、新たな竜の使いとしてアヌビスに挑む。
 黄泉に行ってからのネメシスは、天界での迷いから解き放たれ、実に溌剌としていたようだ。また天界の思い出も悪しきものとは考えていなかったようで、鋼城の再建では天界の建築様式を職人に教え、また光の乏しい黄泉で何とか工夫をして天界の花の種を育てようとするなど、懐古的な行動も見せている。ところで、水虎を守るために立ったとき、また母となってからの彼女は、脆弱と揶揄された当時の面影がないほど力強かった。もしかすると彼女の潜在能力は他の竜の使いにも引けを取らないほど高く、天界にいた当時はそれを発揮する自信がなかっただけなのかもしれない。
 ところで、結果として彼女を黄泉に導き、ソアラ誕生のきっかけを作ったレイノラだが、彼女は寧々ことネメシスに会ったことはない。しかし常々気に掛けていたようで、寧々と水虎の死後、彼女の思い出の地である鋼城の保存に人知れず尽力してきた。思えば、いかにあらゆる場所に通じると言われる黄泉の闇とはいえ、何の用意もないのに、願いがそうそう都合良くジェィローグに通じるものだろうか。異界の様子を知る秘術を作り上げたレイノラなら、答えを知っているかもしれないが・・・
◎関連人物 水虎(夫)、ソアラ(娘)、ジェイローグ(敬意)、レイノラ(鍵)
◎語録 初対面の水虎に馴れ馴れしく呼ばれて・・・「おまえってやめていただけません?」
 戦地から無精髭姿で戻ってきた水虎を出迎えて・・・「帰ったらまずそのお髭を剃りましょうね。」
 黄泉の闇の中で、死を覚悟しつつ・・・「我が全身全霊を賭して!シェリル・ヴァン・ラウティを光の世界へ!!」・・・弱いとは言われていますが、それは肉体面のこと。気性の強さは言葉の端々に覗きます。





●ファン・ボーデ・ビードック 〔第1部〕
 ポポトル四将軍の一人で、海軍を一手に束ねる猛将。ポポトル海軍の強さはフランチェスコ・パガニンの技術と豊富な鉄鋼資源から誕生した鉄機船に寄るところが大きいが、ビードックの戦術無くしてはその躍進もあり得なかったろう。また鉄機船には軍用船舶に精通した彼のアイデアが多数盛り込まれており、長距離砲を備えた潜行艇というのも彼の要望から生まれた形である。
 あくの強い四将軍の中にあって、忠実さと人心掌握術に長け、おそらく最も常識的な人物である。配下からの信頼は熱く、また自らも積極的に前線に立って艦隊指揮にあたるカリスマ性も持つ。出自はクーザー近隣の港湾都市の造船工とされているが、実際はカルラーン沿岸の島に根城を構えていた海賊の頭だという説も。優れた軍師であったが、アンデイロ攻防戦で目の当たりにしたケルベロスの飛行艇ベルグランの前には為す術もなかった。この戦いでポポトルは最大の武器であった海軍が崩壊状態となり、白竜軍の侵攻を許す結果となた。
◎関連人物 グイドリン(部下)
●フランチェスコ・パガニン 〔第1部〕
 世界三大頭脳の一人。発明王の名をほしいままにする大技術者で、ゴルガ国西部の農村、アンティボアに生まれる。貧しかった彼には、同じく三大頭脳のアメヤコフスキーと違って幼少期の逸話はない。しかし幼い頃からどこか人とは違った発想の持ち主であったという。彼の転機となったのは青年期、たまたま近隣で立ち往生していた王家の馬車をいとも簡単に修理したことだった。その腕前に惚れ込んだ当時の国王アントニオ・シルバにより、パガニンは城付きの修理工として雇われたのである。当時はまだケルベロスとの闘争が本格化する前で、ゴルガこそが世界一の強国と謡われていた。実のところ文明の利器では他国にかなり遅れを取っていたのだが、当のアントニオが危機感を抱いておらず、パガニンの才能も一介の修理工に留められたままだった。
 彼が日の目を見たのはポロ・シルバの時代になってからのことである。ケルベロスに不穏な動きが見え始めた頃、ポロは自国の原始的な文明に強い危機感を抱いた。そして技術革新の旗手としてパガニンを招聘したのである。だがもはや遅すぎた。結局それほど大きな成果を上げることができず、ゴルガはケルベロスの軍門に下ることとなる。そしてパガニンの才能は、圧倒的国力を誇る独裁国家の圧政の手へと移ったのであった。
 ケルベロスは彼への支援を惜しまなかった。ゴルガの地で研究をしたいという彼の願いを聞き入れもした。結果として、リーブル・ライン鉄道が生まれ、電灯が生まれ、電気信号による通信機なども生まれた。レミウィスが発見した古代文明というヒントがあったとはいえ、空飛ぶ鋼鉄の船ベルグランをも完成させた。彼の功績は、世界三大頭脳の中でももっとも多くの影響を与え、彼の存在こそが国家の浮沈を握るとさえ言われた。
 研究者としての彼の日々は充実していたに違いない。しかし人間としての日々はもの悲しいものだった。ケルベロスが白竜軍に敗れ去った後も、ポポトル軍侵攻の憂き目を見たゴルガに彼の研究をサポートする力はなく、結局彼は研究のためにケルベロスの手中に留まらざるをえなかった。もはや彼の編み出した文明は世界に広まり、その革新を留めることは許されない状況となっていたのである。彼の息子のマッシモ・パガニンもまた、研究者の道を余儀なくされた。しかし、一子を残して妻もろとも研究中の事故で他界した。そしてフランチェスコ自身もまた、老体に鞭打って過酷なベルグランの整備に挑み、やがて帰らぬ人となった。彼にとって唯一の救いは、同じく研究者の道を辿った孫のジャンルカ・パガニンが、ケルベロスの呪縛から逃れ、曲がることのない強い意志で自らの思う道を突き進んでいることだろう。
◎関連人物 ジャンルカ(孫)、マッシモ(息子)


●ブレン  〔第2部〕
 屈強な肉体を誇るアヌビス八柱神の一人。自らの実力に絶対的な自信を持ち、頑固かつ厳格な気性の持ち主。八柱神は皆、元来モンスターであるものが仮の姿として魔族の容姿を持つか、元来魔族であるものが自らの力をより遺憾なく発揮するためにモンスターの姿を持つか、いずれにせよ二つの姿を持っており、ブレンの場合はグランブレイヴという高尚なモンスターが本来の姿である。グランブレイヴは鬼神とでも呼ぶのが相応しいようなモンスターであり、上半身は人のそれと同じであるが、下半身は強靱な四つ足で、太い尾と勇壮な翼を持つ。鱗こそないが、下半身は竜を思わせる姿とも言えるだろう。魔力の源でもある牛のような二本の角も特徴的である。
 ブレンはソアラたちとの戦いの中で最初に敗れた八柱神であり、しかもソアラを除いた百鬼らを中心とする面々に破れた。もちろん八柱神にも劣らないバルバロッサと棕櫚がいた点はあるが、戦闘経験すらないバットとリンガーに角を切り落とされるなど、過分に油断があったことは否めない。
 八柱神には夜なら不死身のグルー、スピードのメリウステス、海をも凍らせるガルジャ、全てを昇華させるラングなど一芸に秀でた面々が多いが、ブレンは並の剣術では傷一つ付かない強靱な肉体は持つものの、こと戦闘に関してこれといった特殊技はない。肉体的な力強さと優れた魔力で戦う、非常にオーソドックスな存在である。だからこそ彼が八柱神に選ばれた理由は総合力に他ならず、小細工抜きの戦いに臨めば八柱神の中でも有数の実力者であることは間違いないはずだ。
 高潔でプライドが高い反面、正直すぎるところがあり、マーズバインの戦いでは策略に対する脆さが致命傷となった。もしグルーやジャルコといった狡猾な面々と共闘するようなことがあれば、ブレンはより力を発揮できたかもしれない。もちろん脆弱な人間相手に共闘など、彼のプライドが許さないだろうが。
◎関連人物 百鬼(卑下)、アヌビス(忠誠)
◎語録 ソアラを浚われていきり立つ百鬼に・・・「仲間を集めて、武装を整えて来るがいい。そんな鍬じゃあ俺の髭を剃り落とすことだってできんぞ。」
 真の姿であるグランブレイヴに変身し・・・「こうなってしまっては優しい攻撃は何一つない___何もできず散る己の脆さを呪うがいい!」
 レミウィスのヘイルストリームを堪えきって・・・「人間風情があれほどの呪文を使うか___やはり侮れぬ!」・・・言葉はもちろん、髭面からして尊大な人です。






●メリウステス 〔第2部〕
 アヌビス八柱神の一人。多士済々な八柱神の中でも最も若く、誰もが驚いた大抜擢と言われた。しかしアヌビスはその実力を高く評価しており、メリウステス自身も周囲の声に惑わされるような人物ではなかったため、次第に自らの力で存在感を発揮するようになる。
 高潔な魔族の家系に生まれたメリウステスは、人生の苦労話とは無縁である。しかし不自由のない環境にあったからこそ、ストイックなまでに己の強さだけを追求して成長することができたのも事実だ。彼自身の礎となっているのは、自らの成長に対する渇望であり、妥協を許さない気高さであり、人より学ぼうとする謙虚さである。その三つを戦いの中に見出すことを喜びとして、彼は強くなってきた。八柱神となり、自らの力をより効果的に発揮するために、黄金の獅子の姿を手に入れたメリウステスは、やがてゲーブルのような実直な魔族の支持を集めるようになっていた。若いこともあって、最強の八柱神ラングを超える存在になるのではと期待する声もあったようだ。
 戦いでは小細工なしの肉弾戦を好むメリウステスだが、体格は決して大きくなく、一見すると細身にも見える。しかしその体は無駄のない筋肉の固まりであり、また彼の最大の長所であるスピードを活かせる体型であったといえるだろう。それは黄金の獅子の状態でも同じことである。八柱神の中では目立つ存在ではなかったが、若いライディアとは近しい間柄だったようだ。
 一方、ソアラにとってのメリウステスは、竜の使いの力を我が物にする上で大きなきっかけとなった相手である。彼が敵の実力をも最大限を引き出し、なおかつ勝利することを信条としていたからこそ、ソアラは竜の使いに覚醒するチャンスを得ることができた。結果としてメリウステスは、竜の使いに覚醒したソアラの前に歯がたたなかった。覚醒を促さなければ、彼はソアラたちの一行を全滅させ、聖杯を持ち帰り、大いに名を上げたことだろう。しかしメリウステスは敗北を全く後悔していない。全力を尽くしての敗北の瞬間に、彼は最高の清々しさを覚えていたのだから。
◎関連人物 ソアラ(死闘)、ゲーブル(尊敬)、アヌビス(感謝)
◎語録 聖杯を手にできる状況にありながら、ソアラとの対峙を選び・・・「器は力ずくで持ち帰ればすむ。しかし、竜の使いを前にして、この好機を棒に振る気は毛頭ない。」
 病に冒され全く抵抗できないソアラに・・・「___見苦しいな。こんないたぶるようなことは趣味じゃない。ひと思いに命を絶つぞ。」
 ソアラとの戦いに敗れて、自らの死を悟りながら・・・「___見事だ___これなら悔いは___ない!」・・・その潔さは男というか漢という感じだが、さほど暑苦しいタイプではない。若いからか?
●モーリス・アメヤコフスキー 〔第1部〕
 偉大なる作曲家でありバイオリン奏者。ケルベロス西部に位置し、リーブル・ライン鉄道の終着点でもあるベルナットの町の生まれ。同じくバイオリン奏者であった父の影響で、幼少期より音楽に触れ、八つの時からオリジナルの楽曲を街頭で演奏。神童と言われ、ケルベロス城に招かれて演奏を披露するなど、世界的な芸術家として名を高めていく。医学王テンペスト、発明王パガニンとともに世界三大頭脳と呼ばれるが、両者が巨大なパトロンに支えられていたのに対し、軍国化を進めていたケルベロスから音楽への投資はなく、むしろ戦争批判を繰り返す彼は軟禁の憂き目にあったことも。レサの大戦でケルベロスが敗れた後から彼の活動は一層の華やかさを纏い、ローレンディーニ芸術祭で五連覇を達成。名誉芸術家として表彰され、その功績を称える像が建立された。
◎関連人物 ザペル(同志)

●ヤン・シェンバーフィールド 〔第3部〕
 世界的なチョコレート会社の社長。出自はケルベロス西部の豪農だが、ソードルセイドとの国境に近く、レサの大戦時に略奪を恐れて農場を手放し、資産を手にクーザーへと移住した。法王のお膝元であったため、比較的国民の生活水準が高かったクーザーにおいて、彼は嗜好品分野の開拓を目指し、辿り着いたのがチョコレートだった。チョコレートはケルベロスの主に上流階級で嗜まれており、彼もそれを口にしたこと、また製造過程などを耳にしたことがあった。
 その後シェンバーフィールドは、チョコレートがゴルガ西部のジャムニ近辺で製造されているとの話を聞き、現地に赴いて熱心に研究。北方の新しい農業技術を伝来したことで信用を得て、カカオ農園の設立に至る。その後、貿易公社との取り引きにより独自の原料輸送ルートを確立し、さらに小さな工場をクーザーに設立。晴れてシェンバーフィールド・チョコレートの誕生に至る。子供の頃から舌が肥えていたこともあって、チョコレートの風味に対するこだわりは強く、やがてそれは全世界に認められるクーザーの特産品誕生へと繋がったのである。シェンバーフィールド・チョコレートは大工場を構えるほどに成長したが、彼自身は巨万の富を得たことで慢心し、晩年は麻薬の密売や売春宿への支援に手を染め、没後大いに汚点を残した。
◎関連人物 フィラ(経済)








●ワット・トラザルディ 〔第1部〕
 白竜軍の兵士でカーウェン小隊の所属。ライとは入隊以来の中で、お互いに親友と認め合う関係である。決して目立つ人物ではないが、人を尊重する優しさと、忠実に役目をこなす実直さの持ち主。一方で剣の腕はそれほどでもなく、その点でもライとはお互いの得手不得手をうまくカバーしあえる間柄だったといえる。ゴルガの出身で、彼の家族はソアラがゴルガを陥落させた際に全滅している。そのため当初はソアラに強い恨みを抱いてドラルの陰謀にも加担したが、彼女が傷つけられると良心の呵責に苛まれて助けるなどし、蟠りを解いていった。ソアラの一見の後、彼は白竜軍を去り、己の見聞を広めるために郵便配達員となる。カーウェンでライとの再会を果たした時には、エイブリアノスの攻撃から彼を守るなどして活躍した。
◎関連人物 ライ(親友)、ソアラ(怨恨)、ドラル(上司)
◎語録 恨みを口実にソアラをいたぶるドラルを殴りつけ・・・「何が恨みだ!こんなのドラルの欲求不満の解消につきあってるだけじゃないか!」・・・真っ当な人です。



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