地質や地形を楽しむ旅



旅行は非日常の世界が開け、気分もリフレッシュされます。仕事で出かけた旅やヨーロッパの街歩きも、それぞれ思い出深いですが、最近は地質や地形を見る旅を楽しんでいます。gbrainというニックネームでネット地学部「ちーとも」 にも日記を書いています。



モロッコ  (2013.11.1〜11.10)

JTBのツアーでモロッコへ行きました。世界遺産になっているラバト、メクネス、フェズ、マラケシュのメディナ(旧市街)を巡るのと砂漠の日の出を見るためのツアーですが、アトラス山脈を北から南、南から北へと二度も横断するので雄大な景色を堪能できました。写真は丘の上から遠望したフェズの街とジーズ渓谷です。


 



 
オマーン (2013.3.21〜3.29)

青木正博さんの案内でオマーンへ行ってきました。通常は大陸プレートの下に沈み込んで見えなくなる海洋プレートが、オマーンでは大陸プレートの上に乗り上げており、海洋プレートの岩石を間近にに見ることができます。地質に興味のある人には一度は行ってみたい憧れの地ですね。写真は枕状溶岩の露頭とプレート運動で大きく褶曲した地層です。


 

 



立川断層
 (2013.2.8)

立川断層の調査ピットが公開されましたので出かけてきました。調査が終わると埋め戻されるということなので、またとないチャンスです。新聞やテレビでも報道されましたので、見学者が大勢来ていました。天気は良かったのですが、風が冷たく大変寒かったです。

断層は左の写真でほぼ中央を縦に通っています。右の写真では立川礫層を覆っている立川ローム層が見えます。ローム層が途切れている個所は、過去の土地利用で人工的に改変された所です。

立川断層の調査はこれまでにも行われており、その結果は東京都防災ホームページ に詳しく出ています。活動周期は約5000年ということです。


 

(2013.3.28 追加)

3月28日の新聞に、「立川断層誤認」の記事が出ました。断層のずれで縦に列状に並んだと見ていた白い塊は、古いコンクリートらしいというのです。一般公開後の追加調査を含めた結果が東大地震研から出ています。


三浦半島 (2012.10.30)

横須賀に住んでいる友人が、城ケ島と荒崎海岸を車で案内してくれました。まず、城ケ島で北原白秋の碑を訪ねたら、「雨はふるふる 城ケ島の磯に 利休ねずみの 雨がふる」という有名な曲が流れてきました。磯に向かうと、黒と白の縞模様が織りなす見事な地層が続いています。

次に荒崎海岸に向かうと、ここでも白と黒の地層が見えました。城ケ島と同じ三崎層で、海底に堆積した地層です。灰白色〜灰色はシルト岩と砂岩、黒灰色〜黒色はスコリア凝灰岩だそうです。


 



カリフォルニアの地震・火山・氷河 (2012.9.17〜9.28)

東京地学協会の見学旅行で、サンアンドレアス断層、デスバレー、ヨセミテを訪れました。 デスバレーでは40℃を超える暑さも経験しました。少々ハードな旅行でしたが、カリフォルニアの雄大な風景を楽しむことが出来ました。


 




オーストラリア (2012.2.19〜2.24) 

オーストラリアのエコツーリズムとジオツーリズムを学ぶツアーですが、寒い日本の冬を脱出して温まってこようという目的もありました。 ケアンズに滞在して、キュランダの街、DainTreeの熱帯雨林、グリーン島のサンゴ礁、Undaraの溶岩洞窟を訪ねました。見学地が山、川、海、地底と変化に富んでおり楽しい旅でした。


 




東京地学協会の海外巡検  (2012.1.1 追加)

海外の地質見学を全て個人で計画するのは難しいですね。ジオプランニングの企画旅行や、東京地学協会が主催する海外見学旅行に参加するのが便利です。私は退職して時間が自由になり、第14回のアイスランドに初めて参加しました。第13回の中国にも参加できたのに、募集を見落としてしまって残念なことをしました。第15回は募集と同時に申し込み、出かけるのを楽しみにしているところです。これまでの募集テーマを表にまとめ、参加者の報告文をリンクで紹介します。

 テーマ

 日程

旅行社 

募集人数 

予算 

案内者 

 第1回  ハワイ島の火山噴火と氷河地形  2000.3.15-20  JTB虎の門  26人  約19万  早川由紀夫(群馬大)
 第2回  台湾921地震によって生じた地震断層を見る野外巡検  2000.9.23-27  JTB虎の門  30人  約14万  太田陽子(横浜国大)
 第3回  オーロラを科学する:アラスカツアー  2001.3.19-25  JTB札幌  30人  約22万  福田正己(北大)
 第4回  イタリアの火山噴火と遺跡  2001.6.8-15  静鉄観光  25人  約29万  早川由紀夫(群馬大)
 第5回  中国西南恐竜化石の見学旅行  2002.1.13-20  トラベルパ  20-30人  約30万  富田、斉藤(科博)
 第6回  スイスアルプスを歩く  2002.7.18-25  名鉄観光  20人  約30万  平川(北大)、松岡
 第7回  長江・三峡ダム 船で行く地学の旅(中止)  2003.8.5-11  近畿日ツ  20-30人  約30万  加藤(産総研)、盛谷
 第8回  アメリカ西部の大峡谷を行く  2003.11.1-8  静鉄観光  25人  約27万  白尾、遠田(産総研)
 第9回  インド洋からビクトリア湖まで リフトバレー横断の旅  2005.3.1-11  道祖神  20人  約40万  堀 信行(都立大)
 第10回  メコン川とトンレサップ湖をたずねる  2007.3.10-16      約25万  塚脇(金沢大)他
 第11回  ニュージーランドのグリーンでクリーンな自然と社会  2008.2.20-29  近畿日ツ      河内、村岡
 第12回  トルコ大地震跡と古代都市遺跡めぐり  2009.3.20-31  ジオプラン  30人  約34万  伊達二郎
 第13回  中国太行山脈の地形地質とジオパークめぐり  2010.3.14-20  キャラバン  20人  約17万  清川(九大)、岩田
 第14回  アイスランド・裂けて広がる北極圏の島の自然  2010.8.16-27  ジオプラン  15人  約50万  平川一臣(北大)
 第15回  オーストラリアのエコツーリズムとジオツーリズム  2012.2.19-24  近畿日ツ  30人  約25万  菊地(首都大)、有馬
 第16回  カリフォルニアの地震・火山・氷河  2012.9.17-28  近畿日ツ  18人  約27万  奥村晃史(広島大)




グランドキャニオン再訪 (2011.5.8〜5.16)

今から32年前、1979年の5月、小型トラックに便乗して、シアトルからテキサスのパレスタインという小さな町までドライブする機会がありました。途中でブライスキャニオン、ザイオン、グランドキャニオンなどに寄ることができましたが、雄大な景色に感激したものでした。その頃は、地質学の知識はありませんでしたが、その後、地質学の本を読むようになり、グランドキャニオンには、ぜひもう一度行ってみたいとの思いが強くなっていました。今年、2011年の5月に、アトランタに行くことになり、ボストンとグランドキャニオンを加えた旅行を計画しました。


幸い天候に恵まれ、上の様な写真も撮れました。グランドキャニオンへは車が便利ですが、慣れない海外で運転する自信がありません。Flagstaffからバス、Williamsから列車という方法もありますが、今回はLas Vegasから行きはバス、帰りは飛行機にしました。出かける前にいろいろとネットで調べましたが、最近はネット上の情報が充実しており役に立ちます。



グランドキャニオンの魅力 

なんといってもグランドキャニオンの魅力は古生代の水平な地層が見渡す限り続いていることです。雄大な景色が堪能でき、何億年にもわたる時間の流れが感じられます。リムから対岸を眺めるだけでなく、トレイルを歩くのも楽しいです。ロバにまたがって谷を下ったり、ゴムボートでコロラド川を下ったりするのも人気のようですが、ある程度の体力が必要でしょう。

サウスリムの老舗ホテル、El Tovar Hotel に泊まりたかったのですが、半年以上前から予約で埋まるようで、計画を立てた段階ではすでに公園内のロッジも含めてどこも満室でした。近くの町、Tusayanのホテルに泊まり、El Tovar はロビーやレストランを利用して落ち着いた雰囲気を味わいました。国立公園局のページGrand Canyonでは、公園の最新情報がわかるほか、ホテルの予約もできて便利です。



グランドキャニオンの地質 

リムの縁をぐるりと取り巻く崖がペルム紀のカイバブ石灰岩、そのすぐ下の斜面はトロウィープ層、その下の白っぽい目立つ層はココニーノ砂岩で、砂丘に堆積した地層です。大きくうねる斜交層理が見られます。更に下るとハーミット頁岩層、赤い色をした階段状の斜面を形成するスーパイ層、その下の大きな崖がレッドウォール石灰岩です。この石灰岩の層が赤いのは、すぐ上のスーパイ層から浸み出した酸化鉄を含む水で染められたからです。レッドウォール石灰岩層の下はムアブ石灰岩層、続いて広く緩やかな斜面を形成するのはブライトエンジェル頁岩層で、カンブリア紀の海に堆積した比較的柔らかい地層です。青くくすんだ色合いのブライトエンジェル頁岩層の先端の崖はタピーツ砂岩層で、水平な地層はここまでです。この下の切り立った崖は原生代のビシュヌ片岩です。タピーツ砂岩層とビシュヌ片岩の間にスーパーグループと呼ばれる先カンブリア時代の地層が見えるところも一部にあります。

リチャード・フォーティ著、渡辺・野中訳の「地球46億年全史」を読んでいたら、グラドキャニオンの地層の名前を覚える語呂合わせが出ていました。K(カイバブ)、T(トロウィープ)、C(ココニーノ)、H(ハーミット)、S(スーパイ)、R(レッドウォール)、M(ムアブ)、B(ブライトエンジェル)、T(タピーツ)、V(ビシュヌ)にあわせて、Kissing Takes Concentration. However, Sex Requires Manoeuvring Between Tempting Variables. と覚えるのだそうです。星の7つのスペクトル型配列、O型、B型、A型、F型、G型、K型、M型を、 Oh !, Be A Fine Girl, Kiss Me. と覚えるのと似ていますね。

グランドキャニオンでは石灰岩や砂岩などの硬い層は急な崖に、頁岩などの比較的柔らかい層が斜面を形成しています。柔らかい層が速く浸食されて、その上の石灰岩や砂岩が足元の支えを失うと、垂直な節理のところから一気に崩落し、急な崖になると考えられます。こうして出来た Monument Valleyの景色は、西部劇の舞台としても有名ですね。

砂岩層は砂漠や海岸に堆積した地層、頁岩や石灰岩は海に堆積したものです。ということはグランドキャニオンの場所は古代の海岸線で、海面の上昇や低下などの環境変動を記録しているということになります。グランドキャニオンにはオルドビス紀、シルル紀の地層がありませんし、恐竜の時代、中生代の地層もありません。堆積しなかったのか浸食されてしまったのです。グランドキャニオンの北方のザイオンは中生代の地層ですし、その北のブライスキャニオンは新生代の地層です。グランドキャニオンでは新生代に始まったコロラド台地の隆起とともに中生代以降の地層は浸食されてしまったのだと思われます。カイバブ平原を流れていたコロラド川は少しずつ谷を削り、2億5000万年前から17億年前にわたる古生代、原生代の地層が露出するグランドキャニオンが生まれたのでしょう。


グランドキャニオンの地質図はUSGSのページからダウンロードできます。ファイルが大きいので保存しておくと良いでしょう。上の図で、Ptはペルム紀のトロウィープ層、Pcは同じくペルム紀のココニーノ層、薄紫のMrは石炭紀ミシシッピ亜紀のレッドウォール石灰岩層、薄いピンク色のCbaはカンブリア紀のブライトエンジェル頁岩層を表しています。Visiter Centerのある薄い水色の所はPkの記号がありませんが、グランドキャニオン最上部のカイバブ石灰岩層です。グランドキャニオンの地質の解説はBob Ribokasのページが詳しいです。



グランドキャニオンの地質巡検 

地質見学旅行を巡検といいます。山形大学ではアメリカ巡検があるようで、Kazuo's Home Pageにもグランドキャニオンの写真がたくさん出ています。早稲田大学の講義要綱、アメリカ西部地質巡検には、注意事項や参考資料が出ています。羨ましいですね。一緒について行けたらいいですが、そうもゆかないので、これらのページでバーチャル巡検を楽しむことにしましょう。



アイスランド (2010.8.16〜8.27)

東京地学協会の海外見学でアイスランドへ行きました。飛行機はロンドンで乗り換え、レイキャビークへ向かいます。アイスランドは氷河と火山の国です。氷河から流れ出す川が作る大きな滝、ギャオと呼ばれる地面の裂け目、間欠泉など日本では見られない風景に圧倒され、岩石砂漠を横断するという貴重な体験もできました。


 




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