酸ケ湯温泉 Suka-Yu
 update 1998、2003、2005、2010.9
酸ケ湯温泉旅館 0177-38-6400
所 青森県青森市八甲田山中
交 青森駅から十和田湖行バス1時間
車 青森から八甲田山経由28km。東北道弘前ICからR394経由
八甲田山はなだらかな山体で、高田大岳などの小火山からなる連峰。山麓から山腹にかけて、ミズナラやブナの大径木が多く、上部はアオモリトドマ、やチシマザサの亜高山帯で、山頂部にハイマツや雪田群落が散在する。深いブナ林を行く道は実に爽快。城ケ倉温泉を過ぎて、硫化水素臭がしてきたら酸ケ湯。

江戸時代(300年前)の開湯。射損じた鹿を追っていたマタギが見つけた源泉で、古くは「鹿湯」と呼ばれた。宿は、木造2階建の大きな建物で、正面がロビー棟、左手が年代を感じさせる古ぼけた湯治棟(下)。

湯治棟にある障子貼りの大広間では毎夜交流会が開かれ、歌や踊り、笑い声が絶えない。純朴で暖かい人たちとすごす湯治棟泊(4泊以上)は素晴らしい思い出である(1回湯治した)。また、本館から湯治部へ至る廊下に、石鹸から食料品まで扱う売店があり、その奥に、大正時代そのままの
床屋がある。古めかしい椅子や鏡、道具類は本当の「本物」である。おっさん刈りになりそうなので調髪しなかったが、今となっては実に悔まれる。

旅館部は、本館の奥に位置する新館と旧館。
内湯棟がある。
酸ヶ湯から少し登ると、八甲田ロッジ(山小屋風の宿で内湯と露天あり。逗留時にチャドクガの幼虫にさされた!)がある。また、少し上部に豪華な八甲田ホテルができた(1998)。近くに東北大の植物園があり、森林の散策が楽しい(調査でこの宿泊施設に泊まったが、アオモリトドマツの梢で囀るクロツグミの姿が強く記憶に残っている)。八甲田ロッジは廃屋となっていた(2010.9)。
泉質
酸性硫黄泉、多くの泉源(泉温50〜60℃)から引湯し、温度調節している。強酸性(PH2)で、風呂に入りすぎると3日目めあたりで強い湯あたりになるが、これをすぎると病が治るという(診療所あり)。
効能は、冷え性、婦人病、胃腸病、皮膚病、神経痛、痔、火傷など。
私は自然環境調査で数回(10日/回)逗留し、山歩きで擦れた股周辺がタダレて風呂に入れなくなった(→蔦湯によく行った)が、数日過ぎてから治って体調もよくなった。

千人風呂(混浴) (男女の境界がないころ)
玄関を入った突き当りが待合室で、湯上り客が椅子に座り談笑している。その右手が千人風呂(湯屋)で、番台脇が男女別の脱衣場。
風呂は脱衣場から半階分低い場所にあり、脱衣場を出て見渡すと、100坪の湯屋は体育館のように広いが、湯気で奥がぼやける。酸味臭が漂っている。
浴槽、床、壁など全て「ひば」造りで、手前に「
熱の湯」、奥に「四分六分の湯」、左奥にうたせ「瀧湯」、左手前にかぶり湯「冷の湯」がある。
熱の湯5分、四分六分の湯5分、冷の湯をかぶり、瀧の湯3分、最後に、熱の湯3分を処方とする。本来は、三日一回り3回と1日、10日で湯治完了の由。

四分六分の湯(右)
湯はやや熱めなので、縁に腰掛けて休む人が多い。また、奥の壁際の板上での寝湯が気持よかったが、今は、寝湯がしにくいように手摺が設置された。
熱の湯(左)
ややぬるめの濃厚な湯が、絶品。女性は、階段下の洗い場前に板塀があるだけで丸見え(水着不可/バスタオル必携)。若い女性も、結構入浴している(女性専用タイムができた(1998)。
瀧の湯(右)
5条のうたせがある。強いうたせがよく効く。
うたせの勢いが強いため飛まつが目に入って滲みるので、壁に下がっているビニール袋を頭から被って、うたせをする。

「玉の湯」
(右)
旅館部の奥に男女別の内湯がある(上段右の6角屋根)。
4人ほどで満員となる小さな湯。石貼りの床で、湯船はひば造り。

本館に新「玉の湯」ができた。狭い洗い場と長方形の石貼の湯船があり、時間別に男女交代となる(2010.9)。
まんじゅう蒸し
宿から地獄沼を過ぎる。熱湯が湧いていて、人目がなかったら入りたい誘惑にかられる。その先が八甲田ロッジ(廃止)で、手前に東屋がある。
長方形の腰掛け(箱)があり、内部に蒸気が吹出している。
箱に座ると身体の芯から、ほかほかと暖かくなってくる。
古来から「まんじゅうふかし」と呼ばれ、子宝の湯として、また若返りの湯として名高い。

今回逗留してびっくり。混浴タイムは、ぎらぎらした目の若者やおっさんが、湯に浸かったり縁に腰掛けて満員状態だった。大昔は「女性用洗い場」に板塀があって、これが脱衣場〜階段〜洗い場と徐々に伸びてきたが、今回、さらに「四分六分の湯」まで延長されていた。それでも、混浴側に出たら露骨な視線に耐えられないだろう。帳場に
「混浴を守る会」の署名簿があった(2005)。また、「混浴文化」がなくなるのか・・・。
旅館棟さえも古臭くなったが、お湯は健在。再評価はAだが、落ち着いて入れる混浴の復活を強く望む。
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